利用報告書
課題番号 :S-16-NU-0025
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :木曽ヒノキ精油成分の機能性に関する分子挙動の解析
Program Title (English) :Analysis of the molecular behavior related to the functionality of the Kiso hinoki essential oil components
利用者名(日本語) :野口剛, 中川信治
Username (English) :T. Noguchi, S. Nakagawa
所属名(日本語) :夢木香株式会社
Affiliation (English) :YUMEKIKOU, Co., Ltd.
1.概要(Summary )
昨年度、木曽ヒノキ精油が有する消臭機能の作用メカニズムの化学的解明に取り組み、臭い成分であるイソ吉草酸と精油成分の1つであるα-テルピネオールが相互作用する挙動がラマンスペクトルより確認された。本年度は、消臭実験よりこの挙動と消臭機能の関係を繋げることに取り組んだ。また、アミン臭に対する消臭効果を化学的に捉えるため、スペクトル解析と消臭実験で新たに取り組んだ。
2.実験(Experimental)
消臭実験は臭い成分と添加成分(ヒノキ精油成分のα-テルピネオール、α-ピネン、水、添加成分無し)を混合した密閉試料瓶をテドラ-バッグ中で開栓し、経時的に臭い成分のガス濃度変化をガス検知管法で測定した。トリエチルアミンとヒノキ精油成分の相互作用は、1H NMRにより評価を試みた。
使用機器:
NMR(500MHz)装置 (Agilent製 UNITY INOVA 500)
3.結果と考察(Results and Discussion)
イソ吉草酸とα-テルピネオール、α-ピネン、水を混合した系からイソ吉草酸が空気中に蒸発する速度をテドラ-バッグを使用したガス検知管法で評価した。結果を図1に示す。昨年行った気化イソ吉草酸が存在する空気中にオイル成分を吹きかけた実験と同様に、α-テルピネオールがイソ吉草酸のガス化を抑える能力が高いと判断される結果を得ることができ、分子間での相互作用が消臭機能にも寄与していると推察した。
ヒノキ精油にはアミン臭に対する消臭効果も確認されているため、その機構解明にNMRと消臭実験により取り組んだ。トリエチルアミンとα-テルピネオールまたはα-ピネンを混合して1H NMRを測定したところ、各シグナルのケミカルシフトの微妙な移動は認められたが、成分による相互作用の違いと思われる変化を捉えることはできなかった。また、蒸気のイソ吉草酸の場合と同様の消臭機能実験も行ったが、α―テルピネオール、α―ピネンによる特徴的な違いはまだ捉えるには至っていない。
4.その他・特記事項(Others)
測定に際しては、名古屋大学坂口特任教授、近藤一元氏、伊藤始氏に協力をいただいた。また、本取り組みはH28年7月17日付中日新聞朝刊に記事として紹介された。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし