利用報告書
課題番号 :S-16- CT-0071
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :植物の機能性成分の探索と解析
Program Title (English) :Analysis of functional ingredient in plant
利用者名(日本語) :樋口 央紀
Username (English) :Oki Higuchi
所属名(日本語) :株式会社機能性植物研究所
Affiliation (English) :Biodynamic Plant Institute Co., Ltd. (BPI)
1.概要(Summary)
養蚕でカイコの飼料として利用されている桑は、古くから高血圧、滋養強壮、糖尿病に効果があるとされ、漢方では桑白皮(ソウハクヒ)として、鎮咳、去痰に用いられてきた。弊社では、桑葉に含まれる糖尿病予防成分(1-デオキシノジリマイシンなどのアザ糖類)の分析技術を開発し、これにより高機能の桑葉食品の開発が可能になった1)。これまでに桑葉の栽培、収穫、加工方法などのノウハウを蓄積してきた。しかし、アザ糖類の標準品は1-デオキシノジリマイシンしか市販されておらず、これ以外のアザ糖類については精製する必要がある。本利用課題では、桑葉に含まれる糖尿病予防成分(アザ糖類)を精製し、NMR、HPLCで構造解析を行い、標準品として使用できる高い純度のアザ糖類を単離しようとした。
2.実験(Experimental)
最初に桑の乾燥粉末から水、有機溶媒によって目的とするアザ糖類の粗抽出を行った。得られた粗抽出物は濾過、濃縮等の工程後に、各種イオン交換クロマトグラフィーに供し、各種アザ糖類を精製した2),3)。それぞれのアザ糖類をNMRに供し、各種スペクトル解析(1H、13C、1H-1H COSYなど)を行い、構造を確認した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
桑葉から抽出・精製した3つの成分を1H-NMR、13C-NMR、ESI-MSに供し、各種構造解析を行った結果、1-Deoxynojirimycin、2-O-α-D-Galactopyranosyl
-1-deoxynojirimycin、Fagomineであることを確認した。1H-NMRスペクトル(図1)、HPLC(HILICカラムによる解析1))から夾雑物等のピークは観察されなかったことから、各種アザ糖類は単離できたと判断した。
図1 Fagominの1H-NMRスペクトル
桑葉には、今回単離したアザ糖類以外のアザ糖類(1,4-Dideoxy-1,4-imino-(2-O-β-glucopyranosyl)-D-ara
binitol、1α,2β,3α,4β-tetrahydroxy-nor-tropaneなど)も含まれている。現在、これらのアザ糖類についても精製し、NMR等の各種スペクトル分析によって構造を確認中である。
4.その他・特記事項(Others)
・参考文献
1) K. Nakagawa et al. Anal Biochem,
404(2010) 217-222.
2) N. Asano et al. Carbohydrate Research,
253(1994)235-245.
3)N. Asano et al. Carbohydrate Research,
259(1994)243-255.
・謝辞
本研究の遂行にあたりまして、ご協力していただきました千歳科学技術大の河野敬一先生に感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







