利用報告書

植物培養細胞を用いた有用たんぱく質合成システムの開発
森正之
石川県立大学

課題番号 :S-14-JI-0025
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :植物培養細胞を用いた有用たんぱく質合成システムの開発
Program Title (English) :Development of the new protein expression system using BY-2
利用者名(日本語) :森正之
Username (English) :Masashi Mori
所属名(日本語) :石川県立大学
Affiliation (English) :Ishikawa Prefectural University

1.概要(Summary )
研究対象のタンパク質試料を調製することは、意外と難しい。それは、大腸菌や酵母で発現しなかったり、発現はするものの量が少なかったり、うまくフォールドしていなかったりと、入手までに多くの困難が待ち構えているためである。これを回避するために、一般的な方法の他に無細胞系や昆虫細胞系など幾つかの特殊な技術が開発されている。このような技術のひとつとして、本課題では、植物培養細胞BY-2を用いたタンパク質調製技術を開発している。
今年度は、大腸菌では発現量が非常に少なかった植物のペプチドホルモンLUREの調製を試みた。この試料について、質量分析とNMR(核磁気共鳴分光法)を利用して、その構造情報を取得した。

2.実験(Experimental)
植物培養細胞BY-2を利用して発現させたLUREを、アフィニティーカラムにより粗精製し、酵素でタグを切断した後、逆相クロマトグラフィーで精製した。
精製標品の純度と大きさを質量分析で確認した。さらに、試料の高次構造情報を得るために1H-NMRスペクトルを測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
LUREはLURE1〜3の3種類のホモログが存在すると報告されている。BY-2系で3種類全てのLUREの発現を試みているが、今回はそのうちのLURE2を解析した。
質量分析の結果、目的のタンパク質が調製できていることが確認できたので、NMR測定を行った。測定の結果を図1に示す。NMRスペクトルには、高磁場シフトしたメチル基や低磁場シフトしたα1Hのシグナルが存在している。この結果から、この試料が安定な高次構造を形成していることが強く示唆された。

図1 LUREの1H-NMRスペクトル

今後は、安定同位体標識を施した試料を調製して、立体構造決定を行う予定である。現在、これに向けて標識試料調製の際の培養条件の最適化を進めている。

4.その他・特記事項(Others)
梅津喜崇助教と大木進野教授に支援していただきました。記して感謝の意を表します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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