利用報告書

植物炭素化物の化学構造解析
井上芳樹
株式会社伊那炭化研究所

課題番号 :S-19-SH-0022
利用形態 :共同研究型支援
利用課題名(日本語) :植物炭素化物の化学構造解析
Program Title (English) :Chemical structure analysis of plant-derived carbide
利用者名(日本語) :井上芳樹
Username (English) :Yoshiki Inoue
所属名(日本語) :株式会社伊那炭化研究所
Affiliation (English) :Ina Carbonization Laboratory Co., Ltd.

1.概要(Summary )
 (株)伊那炭化研究所では、食品などに使用可能な高純度植物炭素化物(赤松炭、他)を製造している。
 本植物炭素化物の機能性評価、新用途探索のためには、残留物が必ずしも特性を劣化させるとは限らないが、炭素に加え残存する各種有機化合物の検討が不可欠である。本研究課題では、赤松を原料とする赤松炭について、トルエンを用いた成分の抽出を行い、ラマン分析によって含有化合物の検討を行った。

2.実験(Experimental)
 赤松炭などの有機溶媒抽出物について、ラマンスペクトル分析をした。
 使用機器:超高性能ダイヤモンド電極作製装置(顕微ラマン分析装置)
 試料は50 mlのトルエン(特級99.5%)に赤松炭5gを分散させ、室温で6時間攪拌し、残った液体を濃縮し、60~80μlとなったものをスライドガラス上に滴下して作製した。また、トルエン中の残留物の影響を調べるため、赤松炭を分散させずに同様の処理を行ったコントロールの試料も用意した。分析は可視光532nmのレーザを使用して行い、6点を分析し、平均のスペクトルで議論を行った。
 
3.結果と考察(Results and Discussion)
 図1に赤松炭および参照用の試料のラマンスペクトルおよびそれらの差を取ったスペクトルを示す。いずれのスペクトルでも、546 cm-1および1095 cm-1のブロードなピークが観測されるが、これらは、基板のガラス由来のものである。また、1439 cm-1、1464 cm-1、1615 cm-1および1730 cm-1のピークはトルエン中の残留物と考えられる。なお、差のスペクトルにおいては、1615 cm-1のピークで規格化しているため、1439 cm-1のピークなどが残っているが、トルエン中の残留物の割合が赤松炭試料との間で異なっていたものと考えられる。
以上により特異な炭素、有機材料の成分は検出されず、本赤松炭はかなり純粋なグラファイトのみで構成されるものと結論できる。

図1 赤松炭抽出試料(赤色の線)および参照用試料赤松炭なしの試料(黒色の線)のラマンスペクトルおよびそれらの差のスペクトル(青色の線)

4.その他・特記事項(Others)
 なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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