利用報告書
題番号 :S-14-NU-0061
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :植物病害防除に利用可能なきのこ代謝産物の解析
Program Title (English) :Analysis of mushroom substrate for plant disease control
利用者名(日本語) :上野 誠
Username (English) :M. Ueno
所属名(日本語) :島根大学生物資源科学部
Affiliation (English) :Shimane University, Faculty of life and Environmental Science
1.概要(Summary )
現在、イネの重要病害の1つであるイネいもち病の防除に利用可能な菌の探索を行っており、菌類である「きのこ」に注目して研究を行っている。きのこは日本中に多く生息しているが、未同定のものも多く、病害防除に利用可能なきのこ菌やきのこに寄生又は共生している菌が存在する可能性がある。本研究では分離したO-821菌株に注目して研究を進めている。0-821菌株の培養ろ液は、イネいもち病菌の感染行動を著しく抑制することを明らかにしている。そこで本抑制物質の分子量及び構造解析を明らかにする目的で研究を行った。
2.実験(Experimental)
予めO-821菌株の培養液中に含まれる抑制物質を酢酸エチルによる分配抽出により粗単離した後に高速液体クロマトグラフィーを用いて単離した。この単離した物質の構造を明らかにするためにNMR(Agilent Unity INOVA 700および500)を用いて、水素のカップリング情報が得られるHH COSY、炭素と水素の直接結合の情報を与えるHSQC、二個または三個の結合を介した位置にある炭素と水素の情報を与えるHMBC、炭素-炭素の繋がり情報を与えるINADEQUATE二次元スペクトルを測定した。また、分子量の測定のためにMALDI-TOF-MAS、エレクトロスプレイ質量分析装置による測定を行った。さらに、炭素に結合していない水素の存在を明らかにするためにFT-IRによる測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
NMR(Agilent Unity INOVA 700および500)で測定した。その結果、炭素数、水素数が推定でき、HH COSY、HSQC、HMBCにより、ぞれぞれの元素の繋がりが明らかになった。また、MS解析の結果、分子量が推定された。今後、最終的な本物質構造決定を行う予定である。
構造決定後に本化合物の植物病原菌に対する抑制スペクトラムと作用機構やリード化合物の合成が進むことにより、新規農薬の開発にも繫がると考えている。
4.その他・特記事項(Others)
「3rd Korea-Japan Joint Symposium on the Plant Pathology Poster Award」を受賞
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
Presentation
(1)Q. T. Nguyen, K. Ueda, J. Kihara, S. Arase, K Ito, S. Hayashi, M. Ueno. The 3rd Korea-Japan Joint Symposium on Plant Pathology, 2014年10月23日.
6.関連特許(Patent)
なし
*謝辞 本利用は、文部科学省委託事業ナノテクノロジー
プラットフォーム試行的利用として名古屋大学分子・物質合
成プラットフォームの支援を受けて実施されました。NMR及びMS解析は坂口佳充特任教授にご協力いただきました。この場を借りて、深く感謝いたします。