利用報告書
課題番号 :S-17-MS-0044
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :極低温光学系の開発
Program Title (English) :Development of a cryogenic mirror optical system
利用者名(日本語) :和田武彦1), 磯部直樹1)
Username (English) :T. Wada1), N. Isobe1)
所属名(日本語) :1) 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所
Affiliation (English) :1) Japan Aerospace Exploration Agency, Institute of Space and Astronautical Science
1.概要(Summary )
宇宙科学研究所 赤外線天文グループでは、SOI (Silicon-On-Insulator) 技術応用した遠赤外線画像センサの開発を行ってきました。2017年度中に、32×32ピクセルの画像センサが完成する予定であり、その特性評価を実施する必要があります。特性測定は、波長20 μm以上で行う必要があり、そのためには極低温光学系を構築しなければなりません。
そこで我々は、赤外線天文学グループがすでに別の目的で製作していた常温光学系(図1)を、真空で使用できるように改造することにしました。この光学系は、アルミ製(A6061)の2次曲面ミラーと平面ミラーを組み合わせて使用します。極低温での使用を考えると、光学調整のために、調整機構を用いることは現実的でありません。そこで私たちは、光学プレートとミラーホルダーを専用に製作し、3次元測定器を用いて光学プレートの位置を測定し、理想的な光学配置にミラーを設置できるようにミラーホルダーを加工することで光学調整を行う、という新しい方法を採用することにしました。この際、光学系の交差解析によると、ミラーの位置を10 μmより高い精度で測定し、設置する必要があります。また、常温から極低温への熱収縮を考えると、光学プレートやミラーホルダーをミラーと同じアルミで製作することで、光学系全体が相似収縮するような設計をおこないます。
2.実験(Experimental)
理想的な光学配置が可能となるように、ミラー光軸原点とミラーホルダー基準面、ミラーホルダー基準面と光学プレート基準面との位置関係を3次元測定機で測定できる形状に設計を行いました。また3次元測定後に、誤差分を補正加工可能な形状設計を行いました。さらに、配置させたホルダーを一旦取り外し、再配置させたときの取り付け誤差についての検証テストを行い、誤差の少ないホルダーベース部の形状検討ならびにホルダー、ミラーを配置させたときの光学プレートの変形解析を行い許容精度以下となるよう検討を行いました。これらを分子科学研究所 装置開発室において実施していただきました。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ミラーホルダーを決められた位置に設置するために、ホルダーベース部分の2平面をストッパーに押し当ててM4ボルトで2N・mのトルクで固定した際の位置ズレの量について非接触3次元測定機(NH-3SP)で測定しました。その結果ストッパーに押し当てるホルダーベースの2平面に均等に力が加わるホームベース形状にすることで繰り返し取り付け誤差が2μm以下となることを確認しました。図1に今回設計した光学プレート、ミラーホルダーを配置させた3D図を示します。現在は、スペースの都合上、平行ピンによる位置決め構造となっているところについて、ストッパー構造などの繰り返し位置決め精度の高い構造に変更できないか検討を進めています。
4.その他・特記事項(Others)
分子科学研究所装置開発室の青山正樹氏、木村幸代氏との共同研究です。
科研費(25109005)の支援を受けています。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし