利用報告書

機能性銀ナノ粒子を用いた芽胞検知技術の開発
前川 貴宏, 池野 慎也
九州工業大学大学院生命体工学研究科

課題番号 :S-16-KU-0030(NPS16017)
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :機能性銀ナノ粒子を用いた芽胞検知技術の開発
Program Title (English) :Bacterial spore detection by using functional silver nanoparticles
利用者名(日本語) :前川 貴宏, 池野 慎也
Username (English) :T. Maekawa, S. Ikeno
所属名(日本語) :九州工業大学大学院生命体工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Life Science and Systems Engineering,
Kyushu Institute of Technology

1.概要(Summary )
本研究では、芽胞由来のバイオマーカー(DPA)を芽胞検出の標的とし、従来法より100倍の感度(ナノモルオーダーの検出感度)を持つ芽胞検出法の構築を行うことを目標としている。センサ素子として使用する機能性銀ナノ粒子のキャラクタリゼーションをおこない、そして、銀ナノ粒子間で生じるラマンシグナルの増強を利用して、高感度に芽胞由来のバイオマーカーを定性分析した。

2.実験(Experimental)
機能性銀ナノ粒子のキャラクタリゼーションとして、超高分解能走査電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分析(日立ハイテクノロジーズ社製、SU9000)による機能性銀ナノ粒子の高解像度元素マッピングを依頼分析した。また、X線光電子分光測定装置(島津/KRATOS社製、7AXIS-ULTRA DLD)によるナノ粒子上の機能性分子の分子修飾状態を依頼分析した。
高速レーザーラマン顕微鏡(ナノフォトン社製、Raman-touch)を使用し、機能性銀ナノ粒子上のバイオマーカーのラマン測定 (レーザー励起波長533nm、露光時間10秒、積算回数5回、レーザーパワー5mW)を実施した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
調製したFe3O4/Agコア-シェルナノ粒子を超高分解能走査電子顕微鏡により観察し、粒径が約80nmの球状であることを確認した。エネルギー分散型X線分析による元素マッピング画像およびスペクトルの結果から、コアのFe元素、シェルのAg元素を確認した。このコアシェルナノ粒子に機能性分子を結合させた機能性銀ナノ粒子をX線光電子分光測定することで、粒子表面の機能性分子の修飾とその分子へのDPAの吸着を確認した。
芽胞からの抽出サンプルを用いて、ラマン測定を行った。抽出したサンプルのみではシグナルが全く出なく、ラマン測定は不可能であったが、機能性銀ナノ粒子と錯形成することでSERS効果によるラマンシグナルの増大が得られ、ラマンスペクトルによる検出が可能となった。得られたラマンシグナルには、1001cm-1、1073 cm-1、1337 cm-1、1429 cm-1、1574 cm-1にDPA由来のピークを確認した。抽出サンプル中の複雑なラマンシグナルからDPAの定性分析が可能であることを示した。

4.その他・特記事項(Others)
ラマン分光器の使用を快くお受けいただき、貴重なご助言をいただきました九州大学大学院工学府の中嶋直敏教授、XPS測定に関して解析およびご助言をいただきました藤ヶ谷剛彦准教授、多大なる技術的なご支援をいただきました柿田有理子氏に感謝いたします。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Maekawa and S. Ikeno, Student exchange symposium between IBST(PNU) and NURP(KIT), 2016.12.12
(2) T. Maekawa and S. Ikeno, 4th International Symposium on Applied Engineering and Sciences (SAES2016), 2016. 12.18

6.関連特許(Patent)
なし。

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