利用報告書

毒劇物フリーな量子ナノ構造体の開発と光電変換機能発現
西山 桂
名城大学理工学部

課題番号 :S-17-MS-1103
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :毒劇物フリーな量子ナノ構造体の開発と光電変換機能発現
Program Title (English) :Development of toxic-free quantum nanostructures and their application to photoelectric conversion materials
利用者名(日本語) :西山 桂1)
Username (English) :Katsura Nishiyama1))
所属名(日本語) :1) 名城大学理工学部
Affiliation (English) :1) Faculty of Science and Technology, Meijo University

1.概要(Summary )
 現在幅広く使用されているシリコン太陽電池に代わる次世代の光電エネルギー変換材料として、例えば有機太陽電池、量子ドット太陽電池に関する研究開発が盛んに行われている。このうち、CdSe量子ドットは、直径10 nm程度のナノ粒子であり、既存のシリコン太陽電池と比べて次のような利点がある。すなわちCdSeは、短波長側(紫外〜500 nmの波長域)を含む吸収帯を有するので、既存のシリコンよりも太陽光の幅広い波長領域を吸収する。その結果、理論的な光電変換効率が75%に達すると期待されている。
 しかし従来の量子ドットは、CdSeが毒劇物に指定されているため、取扱従事者へ健康被害を与える可能性がある。しかも太陽電池パネルとして電池実装後に廃棄する場合、劇物を含んだ産業廃棄物の処理は困難を有する。一方、量子ドットを太陽電池として実装した場合、吸収断面積が小さいため、実際に得られる光電変換効率が15%程度に留まっている。これは、量子ドット表面の電子が、隣のドットへ容易に移動してしまうことに起因する。
 そこで申請者らは、希土類酸化物(Y2O3等)を用いたナノ粒子やナノロッドを合成した。この材料は、直径35–500 nm程度の粒子、あるいは長さ1 μm程度の棒状構造を有している。例えばナノロッドを使用すると、一次元に伸びた構造のため、電子が他の粒子に飛び移ることなく、同じロッドの一次元方向に沿って移動する。この特異的な物性のため、光吸収断面積に関して、量子ドットよりはるかに効率よく吸収することができると期待される。

2.実験(Experimental)
 界面活性剤鋳型法を用いて、Y2O3ナノ粒子を合成した。合成した材料は、当プラットフォームの支援を得て、分子科学研究所山手キャンパスに設置されている電界放出型走査電子顕微鏡 (FE-SEM)JEOL JSM-6700F及び他の装置を用いて形態観察を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 図1に、Euを添加したY2O3ナノ粒子(Eu@Y2O3)の電子顕微鏡像を示す。粒径200 nm程度の粒子が生成していることがわかる。このEu@Y2O3は、紫外線励起によって母材(Y2O3)から希土類イオン(Eu3+)へのエネルギー移動が起こり、Eu3+に起因する発光線を明瞭に観察できた。
 現在、ナノ粒子表面の修飾とともに電池実装、光電変換効率の実測を進めており、当材料の機能発現を推進している。

4.その他・特記事項(Others)
該当なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
該当なし
6.関連特許(Patent)
該当なし

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