利用報告書
課題番号 :S-16-JI-0034
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :水処理用ろ過膜ファウリング物質の分布測定および微細藻類によるレアメタル吸着機構の解明
Program Title (English) :Distribution of foulants of membrane for wastewater treatment and biosorption of rare metals by microalgae
利用者名(日本語) :本多 了1)
Username (English) :Ryo Honda1)
所属名(日本語) :1) 金沢大学 理工研究域 環境デザイン学系
Affiliation (English) :1) Faculty of Environmental Design, Kanazawa University
1.概要(Summary )
膜分離活性汚泥法による廃水処理では,微生物由来のバイオポリマーが主要なろ過膜の目詰まり物質(=ファウリング物質)と考えられている。しかし,どのような成分がどこに詰まっているかについての知見は限られており,TEMによる膜断面観察によって膜ファウリング構成成分がどのように分布しているかを明らかにする。
電子部品からのレアアース資源回収を目的として,微細藻類を用いたユウロピウムの吸着回収があるが,その吸着機構は未知の部分が多い。TEMによる細胞内観察により吸着されたユウロピウムが細胞内のどこに存在するかを明らかにする。
2.実験(Experimental)
2.1. 水処理用ろ過膜ファウリング物質の分布測定
膜分離活性汚泥法リアクターから採取した濾過膜を試料として目詰まり物質の分布と元素組成を透過型電子顕微鏡・TEM(日本電子社製 JEM-ARM200F)および走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、TM3030plus)を用いて観察を行い,その元素分布をEDXにて観察した。運転条件の異なるリアクターから採取した未使用膜,目詰まり後の膜,目詰まりした膜を物理洗浄したもの,化学洗浄したものの4サンプルを樹脂包埋して薄片を作製した。濾過膜の表面付近を中心に断面観察を行った。
2.2. 微細藻類細胞内のレアメタル分布の観察
ユウロピウムの吸着を行った微細藻類(吸着系)と吸着前の微細藻類(対照系)を,エクセル支持膜グリッド(U1011,イーエムジャパン社製)上で透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM-ARM200F,日立ハイテクノロジーズ社製 H-7650)を用いて観察を行い,その元素分布をEDXにて観察した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
3.1. 水処理用ろ過膜ファウリング物質の分布測定
目詰まり後の膜,物理洗浄後の膜,化学洗浄後の膜をそれぞれ観察したところ,膜内には目立った粒子は観察されなかった。特に,化学洗浄後の膜は未使用膜とほとんど変わらない観察結果となり,目詰まり物質は化学洗浄によるほぼ除去されていることが分かった。
EDXによる元素分析を行った結果,物理洗浄後の膜表面においてCaが未使用膜,化学洗浄後の膜よりも多く分布しているように見られた。それ以外の元素組成は未使用膜の元素組成と大きな違いは見られなかった。
図1 SEMによる膜表面の断面(左)とカルシウム元素の分布(右)
3.2. 微細藻類細胞内のレアメタル分布の観察
いくつかの微細藻類細胞内にEuが分布していることが分かった。
4.その他・特記事項(Others)
本課題は,科研費 若手研究(A)の支援を受けて実施した。
ろ過膜断面試料の作成には,北陸先端科学技術大学院大学の東嶺孝一様,小林祥子様に技術的なご協力を賜った。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし