利用報告書

温度可変X線回折法を用いたホイスラー型熱電変換材料の結晶性評価
宮崎 秀俊(名古屋工業大学・工学研究科)

課題番号 :S-20-MS-1082
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :温度可変X線回折法を用いたホイスラー型熱電変換材料の結晶性評価
Program Title (English) :Evaluation of crystallinity of Heusler-type thermoelectric conversion materials using variable temperature X-ray diffraction method
利用者名(日本語) :宮崎 秀俊
Username (English) :Hidetoshi Miyazaki
所属名(日本語) :名古屋工業大学・工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology

1.概要(Summary )
ハーフメタル性を有するホイスラー型Co2MnSi合金は,高温で高い出力因子を示すことから高温用熱電変換材料としての応用が期待されている1).SiサイトにAl置換を行ったCo2MnSi1-xAlx合金では,多数スピン電子であるsp電子がメインキャリアとなり,ハーフメタルギャップ端にフェルミ準位が剛体バンドモデル的にシフトした結果,劇的なゼーベック係数の変化が生じる可能性が示唆されている2).しかしながら,特に高い性能が期待できるx > 0.5以上では急激な結晶性の低下がX線回折測定の結果から示唆されており,その原因は未だ不明である.そこで,本研究では,Co2MnSi1-xAlx合金におけるAl置換に伴う結晶性の低下の起源を解明するために,高温X線回折測定による高温領域における結晶構造の直接観測を試みることを目的とした.
2.実験(Experimental)
 Co2MnSi1-xAlx合金は,Ar雰囲気でアーク溶解した後,50 MPaの加圧下でパルス通電焼結により1173 Kで5分間焼結することにより作製した.高温X線回折測定は分子科学研究所・機器センターに設置されているオペランド多目的X線回折装置にてMo乾球を用いて室温から
3.結果と考察(Results and Discussion)
 図1にCo2MnSiおよびCo2MnAl合金の室温および1000 ℃で測定したX線回折測定の結果を示す.高い結晶性を示すCo2MnSi合金では,低温と高温で同じX線回折パターンを示している.一方,Co2MnAl合金は,室温ではL21規則線に対応する13°近傍のピークは観測されないものの,1000℃の高温側ではL21規則線に対応するピークが観測された.この結果は,高温領域においては,L21相とB2相が共存しており,試料温度の低下に伴いエネルギー的に安定なB2相が優勢となった結果,室温ではB2相のみとなることを示唆している.もし,1000℃から急激に試料温度を低下させることができれば,高い結晶性のCo2MnAlを得ることができることを示唆しており,焼き入れなどの熱処理プロセスの導入が有効であることを示唆している.

図1 Co2MnSiおよびCo2MnAl合金の室温および1000 ℃で測定したX線回折測定の結果

4.引用文献
1) K. Hayashi et al., J. Electron. Mater. 46 (2017) 2710.
2) Y. Sakuraba et al., Phys. Rev. B. 81 (2010) 144422.
5.謝辞
 本測定は分子科学研究所・機器センター・藤原 基靖主任技術員によるサポートの元,実施しました.深く感謝致します.

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