利用報告書
課題番号 :S-15-NI-48
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :温度応答性高分子を用いた放出制御型DDS開発に関する研究
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :脇本 卓磨
Username (English) :Takuma WAKIMOTO
所属名(日本語) :名古屋大学 工学部 材料強度・評価学研究室
Affiliation (English) :Department of Mechanical Science and Engineering, Nagoya University
1.概要(Summary )
近年,がん治療においてドラッグデリバリーシステム(DDS)が注目されている.DDSとは,抗がん剤などの薬剤を直接体内に投与するのではなく,ナノサイズのキャリアに担持させて投与するシステムであり,従来の経口投与に比べて効率的かつ副作用を抑えたがん治療が可能となる.このDDSにおいて最も重要なのが薬剤を担持させるナノキャリアであり,現在様々な開発例が挙げられている.その多くが生体適合性の高い有機材料を利用したものであるが,これらは構造的に不安定であり,体内で薬剤を安定して運ぶことが難しい.そこで,本研究ではmSiO2に注目した.このmSiO2は多数の細孔を有し,この細孔内に薬剤を担持させることができる.また,生体適合性も高く,無機材料であるため構造的にも安定している.また,交流磁場中で発熱する能力を有するFe3O4ナノ粒子をこれに組み合わせることで,加熱によりがん組織を死滅させる温熱治療特性を付加することができる.今回,Fe3O4ナノ粒子をコア,mSiO2をシェルとするFe3O4@ mSiO2を作製し,高精度ガス/蒸気吸着量測定装置を用いて,細孔径の測定を行った.
2.実験(Experimental)
クロロホルム分散型Fe3O4ナノ粒子と臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を混合し撹拌したのち,純水中に分散させ,NaOHによりpHを8程度とした.これに対し,TEOSを徐々に滴下することでFe3O4@ mSiO2を作製した.これを電炉により500 ℃で焼成し,その後塩酸処理することでCTABテンプレートを除去した.
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig. 1に今回作製したFe3O4@ mSiO2の観察画像を示す.この図より,今回作製したナノ粒子がコアシェル型の構造を取っていることが分かった.Fig. 2に得られた窒素吸着等温線のSF解析結果を示す.これにより細孔径が1 nm以下に多く分布しており,DNAなどの巨大高分子の薬剤を担持させることができない.よって,今後はこの細孔径を大きくするために,テンプレートの修飾など見直していく必要がある.
Fig. 1 TEM image of Fe3O4@ mSiO2
Fig. 2 SF plots
4.その他・特記事項(Others)
なし.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし







