課題番号 ：S-17-MS-2007
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：火星隕石中の変質脈から迫る変質環境の復元
〜硫黄・マンガン・塩素・シリカの化学種分析の試み〜
Program Title (English) ：The elucidation of alteration condition based on iddingsite in Martian meteorites. ~From the chemical speciation of sulfur, manganese, chlorine and silica~
利用者名（日本語） ：菅大暉1)、白石尚輝1)、宮原正明1)、大東琢治2)、稲垣裕一2)、
山口亮3)、大谷栄治4)
Username (English) ：H. Suga1), N. Shiraishi1), M. Miyahara1), T. Ohigashi2), Y. Inagaki2), A. Yamaguchi3), and E. Ohtani4)
所属名（日本語） ：1) 広島大学大学院理学研究科, 2) 分子研・UVSOR施設, 3) NIPR,
4) 東北大学大学院理学研究科
Affiliation (English) ：1) Graduate School of Science, Hiroshima University, 2) UVSOR Synchrotron, 3) NIPR, 4) Graduate School of Science, Tohoku University

１．概要（Summary ）
火星起源隕石の一種であるナクライトに含まれる水―岩石反応生成物をSTXMによる化学種解析に基づき明らかにした。特に、シリカに富む非晶質ないし低晶質物質に着目しSi-XANESの取得を試みた。その結果、そのシリカに富む物質には粘土鉱物が含まれる可能性が明らかになった。
２．実験（Experimental）
ナクライトに属するYamato 000593及びYamato 000749試料を極地研究所より借用した。試料表面を乾式鏡面研磨した後，FE-SEM観察とラマン分光分析を行い，STXM分析に呈する部位を抽出した。STXM分析を行う部分をFIB加工装置で薄膜に加工し，その薄膜をUVSORのBL4Uで測定した。STXM分析後に薄膜のTEM観察を行った。
３．結果と考察（Results and Discussion）
Yamato 000593及びYamato 000749は主に輝石、長石、橄欖石から構成される。FE-SEM観察の結果、橄欖石内部の割れ目や橄欖石と他の鉱物の境界付近に水―岩石反応の痕跡であるイディングサイトが見出された。そのイディングサイトをFIBにより薄膜に加工した。イディングサイトを構成する物質はライフ―ナイト、硫酸塩鉱物（ジャロサイト、ナトロジャロサイト）、鉄水酸化物であり、他にシリカに富む非晶質ないし低晶質な物質も見出された。今年度はこのシリカに富む非晶質ないし低晶質物質のキャラクタリゼーションを重点的に行った。シリカを多く含む物質のリファレンス試料としてオパールと粘土鉱物（スメクタイト）のSi-XANESの取得も行った。その結果、イディングサイト中のシリカに富む非晶質ないし低晶質物質、オパール、スメクタイトのSi-XANESの取得に成功した。取得したSi-XANESと後に行ったTEM観察の結果を併せると、シリカに富む非晶質ないし低晶質物質は粘土鉱物を含む可能性が明らかになった。イディングサイト中のライフ―ナイト、硫酸塩鉱物（ジャロサイト、ナトロジャロサイト）、鉄水酸化物、シリカに富む非晶質ないし低晶質物質は帯状に配列しており、反応に関与した水の温度、pH、溶存イオン種が段階的に変化したことを示唆している。
４．その他・特記事項（Others）
該当なし。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) 菅大暉、左合なつみ、宮原正明、大東琢治、稲垣裕一、山口亮、大谷栄治. JpGU-AGU Joint Meeting 2017. 平成29年5月23日.
(2) 宮原正明、菅大暉、大谷栄治、大東琢治、稲垣裕一.
JpGU-AGU Joint Meeting 2017. 平成29年5月23日.
６．関連特許（Patent）
該当なし。