利用報告書
課題番号 :S-19-SH—0001
利用形態 :共同研究型
利用課題名(日本語) : 炭素材料中への微細空間の創製とこれを利用した化学的応用を目指した機能性
材料の組織・構造解析
Program Title (English) :The innovation of nano spaces in the carbon materials and, textural and structural analysis
of functional materials for chemical application
利用者名(日本語) :押田京一
Username (English) :K. Oshida
所属名(日本語) :独立行政法人国立高等専門学校機構 長野工業高等専門学校 電子情報工学科
Affiliation (English) :Electronics and Computer Science, National institute of Technology, Nagano College
図1 PANと炭素被覆Si粒子を重量比10:1の溶液から作製した電極材料の充放電特性 |
1.概要(Summary )
本研究は、電界紡糸を用いることにより異なる物質を混合して、サイズや形状をコントロールしたナノ空間を持つ材料を創製し、この空間を利用して高機能性材料を開発することを目的としている。
電界紡糸によりシリコン(Si)微粒子をPAN由来のカーボンナノファイバー(CNF)と複合化し、リチウムイオン二次電池(LIB)電極に応用した。これにより高い充放電容量を持つ炭素複合材料を開発して、蓄電デバイスの電極材料としての性能評価を行った。グラファイトを用いた場合に比べ、充放電の第2サイクル以上でも2倍の容量を得ることができ、これまでのSi複合材料に比べてサイクル特性が向上した。
2.実験(Experimental)
電界紡糸用溶媒のDMFにpolyacrylonitrile(PAN)を溶解した。DMF 90wt%に対し、PAN 10wt%のみを溶解した溶液、これらにSi粒子1wt%、5wt%を分散させた溶液の3種類を準備した。電界紡糸と炭素化により作製したSi担持CNF、カーボンブラック,ポリイミドを15:2:16.7 の割合で混ぜ合わせ、N-メチル-2-ピロリドンと混練して銅箔上に塗り、焼成して電極材料を作製した。この材料で負極を形成し、対極にLi 箔を用いてコインセルに収め、定電流定電圧測定方法によりLIB用負極材料の充放電実験を行った。
作製したCNF微細構造をダブルCsコレクタ透過電子顕微鏡(TEM、本申請装置)により観察した。TEM像から画像処理により試料の構造解析を試みた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
PANと炭素被覆Si粒子を10:1重量比で混合して調製した電極材料の充放電特性を図1に示す。
第2サイクルで750mAh/gで、サイクルが進むにつれて放電容量は減少するが、20サイクルでも600mAh/gを超えている。この実験結果は、これまでの結果よりも優れたサイクル特性を示している。CNFのSi担持の状態はTEM観察と画像処理により解析され、Si導入の効果の解明に役立った。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は岩谷科学技術研究助成を受けて実施しましたので、岩谷直治記念財団に謝意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Oshida, N. Kobayashi, K. Osawa, Y. Takizawa, T. Itaya, M. Murata, S. Sato, MRS Advances 2020 Materials Research Society, DOI: 10.1557/adv.2020.34, (2020).
(2) K. Oshida, Y. Takizawa, T. Itaya, K. Osawa, M. Murata, N. Kobayashi, A. Ando, D. Misawa, S. Sato, Carbon 2019, Lexington, KY, USA, No.28, 2019年7月17日.
6.関連特許(Patent)
なし