利用報告書

無機系キラル結晶におけるキラル誘起スピン選択性
塩田 航平,松島 陽介,西上 勇希,宍戸 寛明,戸川欣彦(大阪府立大学 工学研究科 電子物理工学分野)

課題番号 :S-20-MS-0005
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :無機系キラル結晶におけるキラル誘起スピン選択性
Program Title (English) :Chirality-induced spin selectivity in inorganic chiral crystals
利用者名(日本語) :塩田 航平1),松島 陽介1),西上 勇希1),宍戸 寛明1),戸川欣彦1)
Username (English) :K. Shiota1), Y. Matsushima1), Y. Nishiue1), H. Shishido1), Y. Togawa1)
所属名(日本語) :1) 大阪府立大学 工学研究科 電子物理工学分野
Affiliation (English) :1) Department of Physics and Electronics, Osaka Prefecture University

1.概要(Summary )
磁性を持たないキラル結晶がスピン偏極電流を生み出すことを世界で初めて見出した。結晶には磁気がないにもかかわらず、スピンが噴き出し、結晶内を伝わる。この現象は電気的に引き起こし、検出することができ、磁石や磁場を用いる必要がない。結晶がキラルであることのみに由来する効果であり、有機分子から無機結晶の多様なキラル物質が示す普遍的な性質を明らかにする重要な研究成果を得た。
2.実験(Experimental)
キラルな物質が発するスピン偏極流を検出するためのデバイス構造を考案し、無機キラル結晶CrNb3S6の微細デバイスを試作した。集束イオンビーム加工装置を用いてバルク結晶から切り出した微細試料上に分子研/ナノテクノロジープラットフォームが提供する高真空スパッタ装置などを用いて、検出用電極を作製した。室温・ゼロ磁場下で電気計測を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
概念図と実験データを図1に示す。1)磁性を持たないキラル結晶がスピン偏極電流を生み出す、2)磁石や磁場を用いずスピン偏極状態を電気検出できる、3)スピン偏極状態が結晶全体で頑強に保たれる、4)キラル結晶構造の左右の違いを電気的に判別可能、などの性質に示されるように数多くの興味深い特性を見出した。本研究成果を基にして、より系統的な研究を展開していく。
4.その他・特記事項(Others)
本申請と並行して、「無機系キラル結晶微細デバイスの作製」と題して施設利用(ナノテクノロジープラットフォーム)を行っている。本申請と密接に関連するもので、無機キラル結晶のスピン機能を開拓するため微細デバイスの作製を進めている。なお、分子研・山本グループから技術支援いただいた。特に、山本浩史教授と廣部大地博士の協力を得た。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) A.Inui, R.Aoki, Y.Nishiue, K.Shiota, Y.Kousaka, H.Shishido, D.Hirobe, M.Suda, J.Ohe, J.Kishine, H.M.Yamamoto, and Y.Togawa, Physical Review Letters Vol.124,(2020)p.p.166602/1-6.
(2) Y.Nabei, D.Hirobe,Y.Shimamoto,K.Shiota,A.Inui, Y.Kousaka, Y.Togawa, and H.M.Yamamoto, Appl. Phys. Lett. Vol.117,(2020) p.p. 052408/1-5.
(3) 戸川欣彦,日本物理学会第76回年次大会(2021年), (令和3年3月12日).
6.関連特許(Patent)
(1) 戸川欣彦、宍戸寛明、山本浩史,“キラル物質装置”, 特開2020-188202, 令和2年11月19日.

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