利用報告書
課題番号 :S-18-MS-0055
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :生体応用計測のためのラジカル種のESR緩和時間研究
Program Title (English) :ESR Relaxation Time Study of Radicals for Biomedical Measurements
利用者名(日本語) :内海英雄1),浅田瑞枝2),中村敏和2)
Username (English) :H. Utumi1), M. Asada2), T. Nakamura2),
所属名(日本語) :1) 静岡県立大学, 2) 分子科学研究所
Affiliation (English) :1) University of Shizuoka, 2) Institute for Molecular Science
1.概要(Summary )
生体計測ESR(Electron Spin Resonance:電子スピン共鳴)法のスピンプローブとして用いるニトロキシルラジカルは,アスコルビン酸などの還元物質,ミトコンドリア電子伝達系,さらにはフリーラジカルとの反応によりその常磁性を消失することが知られている.「スピンプローブ法」とは,傷害性をもつフリーラジカルとの反応を生体計測へ応用し,生体内におけるフリーラジカル生成を評価する手法である.
また,動的核偏極(DNP)を用いて生体内のフリーラジカルをMRIで可視化するための基礎研究も進んでいる.DNP-MRIはオーバーハウザー効果(フリーラジカルの電子スピンをESRで飽和させるとフリーラシジカルと超微細相互作用している水分子の水素核の分極が100倍以上も増加する)を利用した方法で,フリーラジカルを間接的にMRIで画像化する新たなイメージング法である.
これら生体応用に用いるラジカル種の設計や試料を分散させるマトリックスの選択が重要である.分極剤に必要な電子スピンの物性諸量はスピンプローブやDNP-NMRにおける感度を予測するために重要なパラメーターとなる.これらの生体計測ESR法の高感度化には,ラジカル種の励起寿命など基礎学術的な情報が不可欠である.
本課題では,試験的にニトロキシルラジカル誘導体試料のスピン格子緩和時間測定を行い,物性諸量を検討することとした.
2.実験(Experimental)
装置は分子科学研究所機器センターが保有するBruker ELEXSYS E680を使用した.低温であるほどボルツマン分布による占有数の相違が大きく感度向上でき,また緩和時間も長くなるため,測定温度は低温の方が有利であるが,生体応用計測への汎用性を考えて,今回は室温で実験を行った.溶媒に拡散したニトロキシルラジカル誘導体に関して,パルスESR法による計測を行った.測定はInversion Recovery法によるT1e(電子スピン-格子緩和時間)測定,スピンエコー法によるESEEM(Electron Spin Echo Envelope Modulation:電子スピンエコーエンベロープ変調)によるスペクトルを試みた.
3.結果と考察(Results and Discussion)
Inversion Recovery法によるT1e(電子スピン-格子緩和時間)測定は,ラジカル濃度が高く室温であるために,想定より早い緩和時間が得られた.ただ,測定そのものは問題無く行えたので,系統的な計測が可能になるものと考えられる.一方で,スピンエコー法によるESEEMによるESRスペクトルは,通常の連続波(CW)法によるものとは異なり,異常な振動構造が得られた.この原因に関しては理解が出来ていないが,共鳴中心からずれたときには,エコー信号がビートを打つために正しいエコー強度を得られないためのアーチファクトなものと推測している.今後,さらなる検討を行う.
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







