利用報告書
課題番号 :S-13-JI-0038
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :生体試料のイメージング質量分析における前処理法の開発
Program Title (English) :The new preprocessing method in imaging mass spectroscopy of biological sample
利用者名(日本語) :小澤智行1), 濵田聡志1)
Username (English) :T. Ozawa1), S. Hamada1)
所属名(日本語) :1)日産化学工業株式会社
Affiliation (English) :1) Nissan Chemical Industries, Co., Ltd.
1.概要(Summary )
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)を用いたイメージング質量分析(IMS)は医学,薬学分野において広く用いられている.しかし,生体切片中に多く含まれるPhosphatidylchorine (PC)が強くイオン化されることで,イオンサプレッションが起こる問題がある.白金スパッタリングを利用した表面支援レーザー脱離イオン化法(Pt-SALDI)1は,MALDIと異なるイオン化特性を持つため,MALDIでイオン化が困難な化合物を検出できることが期待される.本研究では,ラット脳切片を用いてMALDI-IMSとPt-SALDI-IMSのイオン化特性を評価した.さらに,有機マトリックスを用いたMALDIと無機マトリックスを用いたPt-SALDIを組み合わせたイオン化法(matrix-enhanced Pt-SALDI:ME-Pt-SALDI)の有効性を評価した.
2.実験(Experimental)
使用装置:質量分析装置(FT-ICR-MS)
厚さ10 μmのラット脳切片を試料として用いた.MALDIの試料は,自動噴霧器(ImagePrep, Bruker Daltonics Inc.)を用いてDHB溶液(30 mg/mL )を2 mL噴霧して調製した.Pt-SALDIの試料は,スパッタリング装置を用いてArガス圧1 Paで膜厚3 nmのPt薄膜を試料切片上に作成して調製した.ME-Pt-SALDIの試料は,MALDIと同様にDHB溶液を噴霧し,Pt-SALDIと同様にPtスパッタリングを行い調製した.
3.結果と考察(Results and Discussion)
MALDIのイメージング結果をFig.1に示す。MALDIでは,PC(36:1)などが主に検出され,その多くが脳全体に分布していた(Fig. 1(a)).一方,Pt-SALDIではPCが検出されなかったが,diacylglycerolのDAG(36:2)などが主に検出され,それぞれラット脳切片中で特異的な分布が観測された(Fig. 1(b)).また,ME-Pt-SALDIのイメージングでは,PCとDAGが同時に検出された(Fig. 2).更に,PCとDAGのイオン強度は,それぞれMALDI,及びPt-SALDI共に同程度であった.この結果より,ME-Pt-SALDIはMALDIとPt-SALDIの両方のイオン化特性を併せ持つことが示唆された.
4.その他・特記事項(Others)
1) H. Kawasaki et al., Rapid Commun. Mass. Spectrom.., 26, 1849-1858 (2012)
(JAIST 大坂一生氏の技術指導による)
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Ozawa et al, Journal of Mass Spectrometry., 50, 1264–1269(2015)
(2) S. Hamada et al, 第63回日本質量分析討論会, 平成27年6月17日
6.関連特許(Patent)
なし







