利用報告書
課題番号 :S-16-CT-0081
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :産業機械におけるカーボン汚れの分析
Program Title (English) :Analysis of carbon dirt on the industrial machinery
利用者名(日本語) :坂村 喬史
Username (English) :T. Sakamura
所属名(日本語) :北海道立総合研究機構 産業技術研究本部 工業試験場
Affiliation (English) :Hokkaido Research Organization, Industrial Research Institute
1.概要(Summary )
産業機械のメンテナンスにおいて、課題の1つに挙げられるのが洗浄である。これは対象とする汚れの種類が多種多様のためである。そこで本研究では汚れに関して、ディーゼルエンジンなどの内燃機関の内部に付着しているカーボン汚れに着目をした。カーボン汚れとは、すすのような汚れであるが密着力が強く疎水性であるため、効率よく除去・洗浄する方法は当該研究者が知る限りあまりない。このカーボン汚れを効率よく洗浄するためや、また実験のための模擬試験片を製作するために、このカーボンの化学状態を明らかにしなければならない。
そこで本研究では、エンジンのカーボン汚れをラマン分光分析のほか、電子顕微鏡観察にて組成分析を行い、カーボンの化学状態を調査する。
2.実験(Experimental)
電子顕微鏡観察はSEM-EDX(日本電子製 JSM-6610LA)、ラマン分光分析にはラマンイメージング(レニショー社製 inVia)を用いた。対象とするカーボン汚れは、カーボンの原料となっている燃料がガソリン、軽油やA重油由来のものを3種類使用した。また、ラマン分光分析には比較のためのカーボン試料として、カーボンブラック、グラファイト粉末も合わせて分析した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1にディーゼルエンジンから採取した、軽油由来のカーボン汚れのSEM観察像を示す。SEM像からカーボン汚れは100nm以下の微小な粒子状の形状であることが見て取れる。EDSを用い組成分析を行った。カーボン汚れの成分は大部分が炭素(C)であったが、他に少量の酸素(O)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、硫黄(S)、鉄(Fe)が検出された。Al、Si、Feはエンジン基材が摩耗したスラッジ、Sは燃料由来と考えられる。また、カーボン汚れの炭素の化学状態を調べるためラマン分光分析を行った。図2に各燃料由来のカーボンと市販の炭素材料のラマン分光分析の結果を示す。カーボンブラックとカーボン汚れは同じ形状のラマンスペクトルが得られた。このことからエンジンのカーボン汚れはカーボンブラックと同じ化学状態であることが推定できた。
・謝辞
本研究の遂行にあたりましてラマン分光分析では千歳科学技術大学の河野敬一先生にラマンイメージングの操作方法や試料セッティングについてご指導いただきました。この場を借りて感謝の意を表します。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







