課題番号 ：S-18-MS-1021
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：異種金属一次元鎖錯体中の第一遷移金属の磁気物性
Program Title (English) ：Magnetic properties of one-dimensional heterometallic chains containing 1st transition metal
利用者名（日本語） ：植村 一広，斉藤 篤生，三宅 里果，舘 大介
Username (English) ：K. Uemura, A. Saito, R. Miyake, D. Tachi
所属名（日本語） ：岐阜大学
Affiliation (English) ：Gifu University

１．概要（Summary）
　我々は、2種類の金属錯体の電子構造を考慮して、複数種の金属からなる一次元鎖錯体の合成に成功している。今回、[Pt2Co(piam)4(NH3)4](PF6)2 (piam = pivalamidate)と[Rh2(O2CCH3)4]を混合して、–Rh–Rh–Pt–Co–Pt–と並んだ[{Rh2(O2CCH3)4}{Pt2Co(piam)4 (NH3)4}]n(PF6)2n (1)を合成し、異種金属結合を介した磁気相互作用の大きさを帯磁率測定で評価した。また、新しい異種金属一次元鎖錯体の合成を目的に、[Pt2M(piam)4(NH3)4](PF6)2 (M = Mn, Ni)と[Rh2(O2CCH3)4]を混合して単結晶化し、その結晶構造を明らかにした。

２．実験（Experimental）
　SQUID型磁化測定装置 Quantum Design MPMS-7を使用し、[Pt2Co(piam)4(NH3)4](PF6)2と1の帯磁率測定をした。それぞれの粉末を秤量し、サランラップとカプセルに封入し、ストロー中に固定して測定した。また、単結晶X線構造解析装置 Rigaku MERCURY CCD-1を用いて結晶構造の解析をした。

３．結果と考察（Results and Discussion）
　1と[Pt2Co(piam)4(NH3)4](PF6)2の磁化率測定の結果（図1）、300 KのχTが2.54、2.46 cm3Kmol–1と、Coあたりの不対電子は3つであることがわかった。1では、低温になるにつれ、χTが減少し、比較的強い反強磁性的相互作用が働いていると考えられる。ゼロ磁場分裂を考慮した式でフィッティングした結果、J = –17 cm–1の大きさで、異種金属結合を介して反強磁性的相互作用が働くことがわかった。
　次に、[Pt2M(piam)4(NH3)4](PF6)2と[Rh2(O2CCH3)4]から、2種類の単結晶が得られた。M = Mnの場合、–Rh–Rh–Pt–Mn–Pt–と並んだ一次元鎖錯体であった。MnはTd配位環境をとり、歪んだ一次元構造であることがわかった。また、M = Niの場合、Rh–Rh–Pt–Ni–Pt–Rh–Rhの一次元状七核錯体であり、無限一次元鎖ではなかったものの、確かに異種金属結合を形成することがわかった。

４．その他・特記事項（Others）
　日本学術振興会科研費補助金 基盤（C）（No. 18K05143）「異種金属一次元鎖錯体におけるパイバンドの創成」の支援のもと遂行した。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) 植村一広，伊藤大輝，佐伯昭紀，43rd ICCC，平成30年7月31日.
(2) 舘大介，植村一広，下総浩靖，海老原昌弘，43rd ICCC，平成30年7月31日.
(3) 三宅里果，海老原昌弘，植村一広，第12回分子科学討論会，平成30年9月12日.

６．関連特許（Patent）
なし