利用報告書

癌免役治療のための死にゆく細胞を選択的に分離するバイオ界面の開発
西田 慶
九州大学先導物質化学研究所

課題番号 :S-19-KU-0027
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :癌免役治療のための死にゆく細胞を選択的に分離するバイオ界面の開発
Program Title (English) :Design of bio-interface exerting spontaneous-isolation of initial apoptotic cells for cancer immunotherapy
利用者名(日本語) :西田 慶
Username (English) :K. Nishida
所属名(日本語) :九州大学先導物質化学研究所
Affiliation (English) :Institute for Materials Chemistry and Engineering

1.概要(Summary )
液-液相分離現象は材料開発に対する有用性だけでなく、細胞内の機能発現との密接な関係性が見出されている。液-液相分離の制御、相転移メカニズムの体系化ならびに応用性の検討は、先端的なバイオマテリアル設計への展開が期待される。液-液相分離を検討する上で重要な要素の一つとして、高分子の水和状態が挙げられる。血液適合性に優れた非水溶性の合成高分子として知られているpoly(2-methoxyethyl acrylate) (PMEA)は、高分子-水界面に構造および運動性の異なる3種の水和状態 (不凍水、中間水、自由水)を示し、その量比が生体機能の発現に関与することを報告している。さらに、PMEAの一次構造を精密に制御 (PMEA類似体)することで、高分子の水和状態を調整可能であることが見出されている。このような非水溶性のPMEA類似体を適切に水中に分散させることができれば、液-液相分離を誘起するとともに水和状態との関係性の解明に繋がると考えられる。そこで、水和状態の異なる複数のPMEA類似体を合成し、水中における微小液滴の形成と機能評価を通じて、高分子の水和状態が液-液相分離に与える影響を検討した。
2.実験(Experimental)
PMEAおよびその類似体のMeOH溶液を、精製水に対して透析することで微小液滴を形成した。また、doxorubicin (DOX)存在下で同様に透析することで、DOX内包液滴を作製した。粒径を測定するためにゼータ電位/粒径測定システム 大塚電子株式会社製 ELSZ-2を使用した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
位相差顕微により各水溶液を観察した結果、微小液滴の形成が確認された。PMEAからなる液滴の流体力学的径は1.46 μmであり、各PMEA類似体の粒子径には差が認められた。TNSを各微小液滴に添加した結果、すべてのPMEA類似体において蛍光強度の顕著な増加ならびに液滴内へ局在していたことから、液滴内部は疎水的環境であることが示唆された。興味深いことに、各PMEA類似体において一様な蛍光強度を示した一方、各PMEA類似体の水和状態または一次構造によってTNSの極大蛍光波長が長波長側にシフトした。これらの結果は、高分子の一次構造および水和状態が、微小液滴の形成過程ならびに液滴の内部環境に対して強く関与することを示唆していると考えられる。このような内部環境に対する疎水性分子の内包性を評価するために、DOX存在下で微小液滴を形成させた。その結果、液滴内へDOXの局在化が認められ、5日間に渡って維持された。以上より、高分子の一次構造ならびに水和状態を制御することで、液-液相分離の形成および機能発現を制御可能であることが示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 西田慶,穴田貴久,小林慎吾,上原広貴,田中賢,第41回日本バイオマテリアル学会年会, 2019/11/26
(2) Hiroki Uehara,Kei Nishida,Shingo Kobayashi,Masaru Tanaka, China-Japan Biopolymer Symposium, The University of Kitakyushu, hukuoka, Japan 2019/11/7
6.関連特許(Patent)
なし

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