課題番号 ：S-15-MS-1050
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：硫化銅ナノ粒子の近赤外局在プラズモン共鳴における光学非線形性の研究
Program Title (English) ：Plasmonic nonlinear optical properties of copper sulfide nanoparticles in
near-infrared region
利用者名（日本語） ：濱中　泰
Username (English) ：Y. Hamanaka
所属名（日本語） ：名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) ：Nagoya Institute of Technology

１．概要（Summary ）
　金属ナノ構造のプラズモンを光計測や光デバイス等に応用するプラズモニクスが注目されている。高濃度のキャリアをドープした半導体のナノ粒子は，近赤外の局在表面プラズモン共鳴を示す。金属ナノ粒子では不可能な，キャリア濃度を変えて共鳴波長を制御することができる点と，共鳴波長の範囲が広い点が，特徴である。本研究では，硫化銅Cu2-xSのナノ粒子を対象に，半導体ナノ粒子の局在表面プラズモンの特徴を調査した。

２．実験（Experimental）
Cu2-xSナノ粒子をヘキサンに分散し，局在プラズモン共鳴付近の波長で三次非線形感受率を測定した。測定光学系は自作し，デジタルオシロスコープ等の計測機材を借用した。
可視紫外分光光度計 Hitachi U-3500： 線形吸収スペクトルの測定と試料の濃度調整に使用
ピコ秒レーザーMillennia-Tsunami TITAN-TOPAS：
非線形吸収測定の光源として使用

３．結果と考察（Results and Discussion）
　ピコ秒レーザーの波長をCu2-xSナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴の波長（1000～1500 nm）に合わせ，強度を変化させながら試料の吸収係数を測定した。吸収係数は入射光強度の増加とともに減少した。吸収係数の入射光強度依存性を解析して，非線形吸収係数を求めた。非線形吸収係数は三次非線形感受率の虚部Im(3)に変換した。Im(3)の値はナノ粒子濃度に依存するため，線形吸収係数で規格化して濃度の差の影響を解消した。
　図１に平均粒径4.5 nmと9.9 nmのCu2-xSナノ粒子の吸収スペクトルとIm(3)を示す。Im(3)は負の値であり，その大きさは局在表面プラズモンに対して共鳴増大した。また，粒径が大きいほうがIm(3)の値は大きかった。このような特徴は，金，銀，銅のナノ粒子の場合と同様である。一方，Im(3)の値は同程度のサイズの金ナノ粒子よりも一桁小さかった。

４．その他・特記事項（Others）
〔謝辞〕
本研究は，廣瀬達徳氏，山田　薫氏（名工大大学院生），葛谷俊博博士（室蘭工業大学）と共同で実施した。ピコ秒レーザーと可視紫外分光光度計の使用にあたりご支援いただいた上田正氏に感謝申し上げる。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) 山田　薫，廣瀬達徳，桑田貴彦，上田晃敬，濱中　泰，葛谷俊博, 日本物理学会第71回年次大会, 平成28年3月21日.

６．関連特許（Patent）
なし。