利用報告書

磁性半導体による半導体スピントロ二クスデバイスの開発とその評価
日髙志郎1), 内富直隆1)
1) 長岡技術科学大学

課題番号 :S-15-JI-0031
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :磁性半導体による半導体スピントロ二クスデバイスの開発とその評価
Program Title (English) :Development and evaluation of semiconductor spintronic devices by magnetic semiconductor
利用者名(日本語) :日髙志郎1), 内富直隆1)
Username (English) :S. Hidaka1), N. Uchiotomi1)
所属名(日本語) :1) 長岡技術科学大学
Affiliation (English) :1) Nagaoka University of Technology

1.概要(Summary )
光・電子集積回路の実現には、現行の半導体レーザーの基板となっているInP上に1.55 mの光を透過する光アイソレータを組み込むことが望まれる。我々はその候補となるZnSnAs2薄膜のInP(001)基板上への成膜技術を開発している。試料の磁性不純物濃度が希薄であること、また薄膜であることなどの理由で振動試料型磁力計(VSM)では磁化の検出が困難である。そこで本申請課題では、Mn添加ZnSnAs2薄膜にける磁化特性の膜厚依存性について、超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて調査した。

2.実験(Experimental)
Mn添加ZnSnAs2薄膜試料は分子線エピタキシーにより半絶縁性InP(001)基板上にZnSnAs2緩衝層を介して作製した。Mn添加層の膜厚はt=80, 170, 250 nmである。またカチオンサイトにおけるMn濃度は膜厚の薄い順に7.76、8.29、8.25%である。これらの試料は事前に高分解能X線回折(XRD)を用いてその構造評価を行なわれており、異相が検出限界以下であることが確認されている。この試料群についてSQUID(カンタム・デザイン社製MPMS-XL7SK)により磁化の磁場依存性および温度依存性を測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1はMn添加ZnSnAs2薄膜の各膜厚における残留磁化の温度依存性である。全ての膜厚において室温で強磁性を示すことが確認された。なお、50 K付近に現れているピークは残留酸素の反強磁性-常磁性転移の影響と考えられる。t=80 nmの試料においては、100 K以上の温度領域でこれまで観測されていなかった磁化の線形的な現象が観測された。この理由について、XRD測定よりt=80 nmが特に結晶性が高いことが確認されており、このこととの関連について現在考察中である。一方で、t=170, 250 nmの試料においては強磁性体の典型的な磁化の温度依存性すなわちBrillouin関数的な振る舞いが観測された。

4.その他・特記事項(Others)
本課題について北陸先端科学技術大学院大学の赤堀誠志准教授より多大な技術支援を受けました。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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