利用報告書
課題番号 :S-17-CT-0029
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :積層セラミックコンデンサの絶縁劣化メカニズムの解明
Program Title (English) :Investigation of degradation mechanism of insulation resistance for multilayer ceramic capacitor
利用者名(日本語) :鈴木 哲男1),
Username (English) :Tetsuo Suzuki1)
所属名(日本語) :1) エバープラスマテリアル株式会社
Affiliation (English) :1) Everplus Material Co., Ltd.
1.概要(Summary)
弊社では、積層セラミックコンデンサ(以下MLCC)の製品開発事業を行っている。開発製品には、所望の電気特性と高信頼性が要求される。高信頼性の確保には、高温中、電圧負荷での絶縁抵抗の劣化を抑制することが必要だが、その劣化機構は複雑で、詳細な分析無くして解明は困難である。今回、あるMLCC開発品をガス種の異なる2種類の炉で焼成し、信頼性試験を実施した結果、製品寿命に差が確認された。要因調査として、MLCCの内部構造を確認したところ、Ni金属層に2次相の存在と、その形成状況に差が見られた。さらに詳細な調査のため、千歳科学技術大学保有のFE-SEMに付属のEDSを用いて元素分析を行い、比較を行った。
2.実験(Experimental)
MLCCは誘電体と金属の異種積層構造で構成され、還元雰囲気中で焼成される。今回、同一組成の誘電体層、Ni金属層、樹脂で構成されたMLCCグリーンチップを準備し、脱脂した後、炉AとBに分け焼成し、サンプルを作製した。炉A、Bは昇温パターンは同じだが、炉内酸素分圧の制御に用いるガス種が異なる。炉Aはガス種a、b、cを用い、炉Bはガス種a、b、dを用いている。これらに対し、信頼性試験を実施した結果、炉Bで作製したサンプルの方が、製品寿命が短いことが分かった。
完成したサンプルは内部観察のため、所定の位置まで機械研磨した後、CPでイオンミリング加工した。千歳科学技術大学のFE-SEM(日本電子製 JSM-7800F)を用いて、加工面に対しEDSによる元素分析を実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
はじめに、FE-SEMによるサンプル内部の観察結果の比較を図1に示す。二次電子像より、Ni金属層にNi金属とは異なる2次相の形成、並びにその形成状況に差が確認された。これに対し、EDSによる元素分析を行い、比較した結果を同様に図1に示す。2次相部分から誘電体粉末材料に使用したMgが検出された。炉Aでは微量だが、炉Bでは複数箇所において高い濃度で検出された。
図1. サンプル内部の二次電子像とMgカラーマッピング
この差は、用いているガス種の違いによる影響と考えられる。炉Bで用いているガス種dはMgの誘電体層からNi金属層への移動促進作用を有すると推察する。製品寿命は炉Bの方が短いことから、2次相の形成抑制が高信頼性の確保に繋がるものと推察する。
4.その他・特記事項(Others)
FE-SEMの機器利用に対し、千歳科学技術大学 河野様、山崎様、田中様に多大なるご支援を賜りました。厚く御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし