利用報告書
課題番号 :S-18-NM-0031
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :穴の空いたグラフェンによる高効率水素発生電極の開発
Program Title (English) :Development of highly effective hydrogen evolution electrode by using holey graphenes
利用者名(日本語) :伊藤良一1)
Username (English) :Y. Ito1)
所属名(日本語) :1) 筑波大学 数理物質系
Affiliation (English) :1) University of Tsukuba
1.概要(Summary )
化学ドーパントを含むグラフェンは金属が不要な触媒として有望視されている。特に3次元構造を持たせたグラフェンでは幾何学的歪があるエッジ構造に化学ドーパントが集中して存在することが示唆されており、それを直接電子顕微鏡で原子配列を観察し、またその場元素分析することで局所構造と化学ドーパントと触媒機能の相関を解明したい。また、化学ドープの有無で電気化学表面積が変化するかどいうかの定性的試験として濡れ性についても検討したい。
2.実験(Experimental)
試料は銅基板の上にシリカ粒子を塗布し、化学気相蒸着法により窒素と硫黄を同時にドープしてグラフェンを成長させた。銅基板とシリカナノ粒子を弱酸で除去した後、電子顕微鏡用銅メッシュの上に取り付けて電子顕微鏡を用いて観察した。実動環境対応物理分析電子顕微鏡 (JEM-ARM200F-G)にて高分解電子顕微鏡観察とその場元素マッピングを行った。また、濡れ性を調べるために水を用いた接触角測定を行った。
利用装置:接触角測定装置(VCA Optima-XE)
3.結果と考察(Results and Discussion)
窒素と硫黄を同時にドープしたグラフェンをARM200F-GのSTEMモードを用いて観測したところ、穴の空いている構造が観察された。また、ハチの巣構造を持つグラフェンの格子が欠陥の導入によって乱れていることも確認された。STEM-EELSを用いて曲面部分の構成元素を観測したところ、グラフェンエッジ部から遠いところは化学元素のドープ量は少なく、グラフェンエッジ部周辺の化学ドープ量が多いことがその場元素マッピングによって明らかとなった。また、接触角を測定したところ、電子顕微鏡観察により化学ドープが多く含まれているグラフェンエッジ構造がある試料は疎水性から親水性に変化したことが明らかとなった。本研究ではこのエッジ構造を持つグラフェンを水の電気分解用の水素発生電極として採用し、水素発生試験を行った。得られた電気化学データによると、化学ドープを多く含むエッジ構造による濡れ性の増大により電気化学表面積が増大し、エッジ部が良い触媒活性サイトとなっていることがその場電気化学測定により示唆された。これらの結果、エッジ部は触媒活性が高く、エッジ構造を多く持つことで金属触媒を使用しない水素発生触媒の良い設計指針となることが期待される。
4.その他・特記事項(Others)
NIMS李潔様に装置取り扱い説明を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 伊藤良一, 化学結合を制御した多孔質グラフェンの物性とその応用研究, 第11回酸化グラフェンシンポジウム、 東北大片平キャンパス、12月21日.
(2) 伊藤良一、熊谷明哉、三浦千穂、倉持宏隆、大戸達彦、脇坂暢、永田勇樹、高橋康史、Hu Kailong、藤田淳一、末永 智一、エッジに化学ドープされた穴空きグラフェンによる電気化学的水素発生反応、日本化学会第99春季年会、甲南大学岡本キャンパス、2019年3月16日.
(3) Akichika Kumatani, Chiho Miura, Hirotaka Kuramochi, Tatsuhiko Ohto, Mitsuru Wakisaka, Yuki Nagata, Hiroki Ida, Yasufumi Takahashi, Kailong Hu, Samuel Jeong, Jun-ichi Fujita, Tomokazu Matsue, Yoshikazu Ito, Chemical dopants on edge of holey graphene accelerate electrochemical hydrogen evolution reaction, Adv. Sci., 2019, 1900119.
6.関連特許(Patent)
なし