課題番号 ：S-15-MS-1017
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：窒化硼素層間化合物の物性
Program Title (English) ：Physical Properties of Boron Nitride Intercalation　Compounds
利用者名（日本語） ：小林本忠
Username (English) ：小林本忠
所属名（日本語） ：兵庫県立大学大学院物質理学研究科
Affiliation (English) ：Graduate School of Material Science, Univ. of Hyogo

１．概要（Summary ）
　六方晶窒化硼素(h-BN)は、類似の構造をとるグラファイトと同様、その層間に種々の原子、分子を取り込んで層間化合物を生成し、伝導性、超伝導、特異磁性等興味ある物性を発現する事が期待される。しかしながら最近のリチウムやブレンステッド酸についての報告を除きバルクな層間化合物生成の報告はなく、これまで物性についての確実な報告は無い。我々は、超伝導や特異磁性等興味ある現象を探索することを目的に、気相法、溶媒法あるいは加圧法等様々な作製法を用いてバルクな窒化硼素層間化合物を作製し、母体の耐熱性、潤滑性、イオン結合性を生かしての新たな層間化合物創製を目指した。

２．実験（Experimental）
磁化測定装置MPMS−7, MPMS—XL7
電子スピン共鳴装置E500
顕微ラマン分光装置RENISHAW INVIA REFLEX
　熱交換用のヘリウムガスと共に試料管に封入した試料について、磁化測定装置、電子スピン共鳴装置を用いて磁気特性・電子物性を測定し、超伝導相を探索し、スピン状態の変化、金属相の出現を調べた。またインターカレーション・ドーピングの確認の為、顕微ラマン分光装置を用いて電荷移動に伴う格子振動の変化を調べた。

３．結果と考察（Results and Discussion）
　　アルカリ土類金属Ca、Sr、Baを白色粉末のh-BNと共に熱処理して作製した黒色試料について、SQUID、ESR、Raman分光を用いて層間化合物生成の可能性を探り、物性を探索した。Caについては、800 K付近で２−４週間程度熱処理した一部の試料で、X線回折プロファイルにBN三層おきにCa層が挿入された第３ステージに由来すると考えられる新たな回折線が、顕微ラマン分光スペクトルのE2g2モードにCaからBNへの電荷移動を示唆する波数シフトが見出された。またSQUID測定とESR測定で温度に依存しない小さな常磁性成分の増加が検出され、これらから層間化合物生成を示唆する結果を得た。この結果に基づき新たに作製した試料を加えて詳細に調べたが、現時点では、猶、試料依存性があり、定量性が十分ではなく、金属相の存在は未確定である。超伝導転移は2K以上で見い出されていない。
　　関連して、電荷移動に伴い物性が変化するKxpicene、Fullerides LixC60、黒鉛層間化合物BaC6についての実験を行った。Kxpicene　については様々のK濃度での長時間熱処理均質試料やK金属とpicene混合物の連続熱処理試料についてESRとSQUID測定を行い、金属相、超伝導相は検出されないことを示した。また試料に強磁性不純物が混入すると磁化率が超伝導転移に類似の温度変化を示す事を見出した。この知見に基づきKxpiceneの超伝導報告には疑問があることを論文に纏め、更に金属相不在の論文を執筆中である。LixC60について、SQUIDによる超伝導検出実験及びRaman振動数シフトによる電荷移動量見積り結果との詳細な比較から、懸案であった超伝導相及びLi飽和相の組成についての知見を得、更に論文に纏めるべく実験を重ねた。またBaC6について、Ramanによる試料同定を試みた。

４．その他・特記事項（Others）
　無し。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1)小林本忠　他, ISIC18, 平成27年6月２日.
(2)小林本忠　他, 日本物理学会第2015年秋季大会, 平成27年9月16日.
(３)小林本忠　他, 第42回炭素材料学会年会, 平成27年１2月4日.
(4)S.Heguri, N.Kawade, T.Fujisawa, A.Yamaguchi, A.Sumiyama, K.Tanigaki and M.Kobayashi, PRL, Vol.114 (2015) p.p.247201.
(5)S.Heguri, M.Kobayashi and K.Tanigaki,　PRB, Vol.92 （2015） p.p.014502.
６．関連特許（Patent）
無し。