利用報告書

窒素中熱処理を行った多結晶ニオブの表面観察
許斐太郎1)
1) 高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設,

課題番号 :S-18-MS-1079
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :窒素中熱処理を行った多結晶ニオブの表面観察
Program Title (English) :Surface analysis for nitrogen processed fine grain niobium by using SEM/EDX
利用者名(日本語) :許斐太郎1)
Username (English) :T. Konomi1)
所属名(日本語) :1) 高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設,
Affiliation (English) :1) High Energy Accelerator Reserch organization- Accelerator division

1.概要(Summary )
純ニオブを空洞材料とした超伝導高周波加速空洞の性能向上のための材料表面の分析を行っている。近年米国フェルミ研究所で開発された「窒素中熱処理」により従来の処理方法「標準レシピ」に比べて10 %の高電界・2倍の高Q値(Q値はRF表面抵抗の逆数であり、RFの蓄積効率を表す)が達成された[Ref.1]。素粒子物理の実験を目的とした国際リニアコライダー計画では8000台の超伝導高周波加速空洞を用いるが、窒素中熱処理技術を導入することで受け入れ加速電界を従来の35 MV/mから40 MV/mに向上させることを目的としている。
超伝導空洞の場合、RFの侵入深さは50 nm程度であり、その深さまでの組成、元素分析が重要である。窒素中熱処理では真空炉で窒素を導入した表面が空洞の最終表面となるため、導入する窒素以外に真空炉内の残留ガス成分である水素、炭素、酸素が表面から検出される。これらの不純成分は超伝導空洞の性能を劣化させると考えられる。真空炉の温度、窒素圧力、導入時間などを最適化することで、不純成分を低減し、より安定に高性能な条件を得られる窒素中熱処理条件を探索する。
2.実験(Experimental)
ニオブの表面分析には低真空分析走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製SU6600)を用いた。本装置のEDXは横差し型と呼ばれる構造であり、X線取り込み角が斜め差し型に比べて、100倍ほど検出効率が高くなっており、微細な表面元素の分析が可能である。分析深さは加速電圧を変えることで調節でき、本実験では5 kVの加速電圧で行った。この時の検出深さは~50 nmである。結晶粒界または結晶表面の酸素と炭素濃度に分布に着目して測定を行った。
測定したサンプルは超伝導空洞性能が向上したものと、向上しなかったもの、窒素を導入していないものの3種類である。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 窒素を導入していないサンプルは3つの真空炉を使い熱処理を施した(図1右)。3つの真空炉はそれぞれ、上段のJ-PARC炉はクライオポンプとターボ分子ポンプ、中段のKEKS炉は油拡散ポンプ、下段のCOI炉はクライオポンプをそれぞれ主排気としているという違いがある。有意な差ではないが、J-PARC炉が最も炭素、酸素分布が均一であり、それ以外は結晶粒ごとの炭素濃度差があるように見える。
 窒素中熱処理のサンプルは同時に熱処理した加速空洞の性能が向上したものと、向上しなかったものに分類して比較した。有意な差ではないが、性能が向上しなかったものは結晶粒ごとの炭素濃度に差があるように見える。
 空洞性能とSEM/EDX分析の間に明確な関係はまだ見えない。今後、他の測定方法と組み合わせた分析、または、サンプル数をより増やして関係を明らかにしたい。
4.その他・特記事項(Others)
本研究は、文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム課題として分子科学研究所ナノプラットフォームの支援を受けて実施されました。機器センター(ナノプラット)の松尾友紀子氏にSEM/EDXの測定を行っていただいたことと、多くのご助力、ご助言をいただいたことに深く感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Konomi et al.,” Niobium sample analysis for nitrogen infusion and doping” Proc. of LINAC18, Beijing, China, TUPO073, Sep. 2018.
(2) T. Konomi, et al., “Sample analysis at KEK”, Oral presentation, TTC meeting 2018 at RIKEN Nishina Center, Jun. 2018.

6.関連特許(Patent)
 なし

図1: ニオブサンプルの炭素と酸素の分布。

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