利用報告書

粘土ペーストにおけるレオロジーの温度依存性
植村千尋1), 中原明生2) , 馬場龍2)
1) 総合研究大学院大学物理科学研究科, 2) 日本大学理工学部

課題番号 :S-18-NM-0064
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :粘土ペーストにおけるレオロジーの温度依存性
Program Title (English) :Temperature dependence of clay paste rheology
利用者名(日本語) :植村千尋1), 中原明生2) , 馬場龍2)
Username (English) :C. Uemura1), A. Nakahara2), R. Baba2)
所属名(日本語) :1) 総合研究大学院大学物理科学研究科, 2) 日本大学理工学部
Affiliation (English) :1)SOKENDAI, 2) Nihon Univ.

1.概要(Summary )
粘土ペーストの降伏応力の温度依存性を測定したところ、温度の上昇に伴い、降伏応力が急激に増加する結果が得られた。粘土とは異なり、粒子間に斥力が働く系においては、絶対温度に対して降伏応力が比例するという理論の予測がある。実験では、斥力系と引力系では、降伏応力の温度依存性に関するメカニズムが異なると考えた。降伏応力は微視的には粒子間のネットワークを破壊するために必要な力と理解され、粒子間の引力が強くなるほど、ネットワークは強くなる。そこで、降伏応力の温度依存性は粒子の電位が変化することで粒子間引力が変化するために現れるのではないかと考えた。この仮説を検証するため、ゼータ電位の測定をおこなった。結果、温度の上昇に伴い、ゼータ電位が増加する傾向が得られた。しかし、誤差が大きく、正確な測定が難しい。今後、正確な測定を行い、降伏応力の温度依存性が現れる要因について明らかにしていきたい。

2.実験(Experimental)
 粒子のゼータ電位の測定を行うため、NIMS所有のレーザーゼータ電位計ELSZ-1000Zを使用した。試料には炭酸水酸化マグネシウム(関東化学株式会社 鹿1級)を用いた。体積比率が0.05%に水と粉体を混合した液体を、温度を7℃、25℃、50℃、75℃と変化させ、各4回ずつ測定をおこなった。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 ゼータ電位の温度依存性についての測定結果を以下の図1に示す。

図1 ゼータ電位の温度依存性

実験結果より、温度の上昇に伴い、ゼータ電位の値が大きくなる傾向が得られた。しかし、粒子は水中で凝集するため、今回の測定結果は凝集体のゼータ電位を測定したものである。凝集体のゼータ電位が上がるということは斥力の増加を示しており、今回の測定結果では降伏応力の温度依存性は説明できない。
また、実験結果の誤差が大きく、正確な測定結果が得られていない可能性がある。要因としては、沈殿の影響が考えられる。測定中に粒子が沈殿し、動いてしまうと正確な測定が行えない。正確な測定を行うためには工夫が必要である。

4.その他・特記事項(Others)
装置使用法についてNIMS李潔氏、竹村太郎氏の支援を受けた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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