利用報告書

糖鎖特性解析
坂本 泉, 來間 利江, 上松 亮平
株式会社アクロスケール

課題番号 :S-16-TU-0008
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :糖鎖特性解析
Program Title (English) :Analysis and Characterization of Glycans.
利用者名(日本語) :坂本 泉, 來間 利江, 上松 亮平
Username (English) :Izumi Sakamoto, Rie Kuruma, Ryohei Uematsu
所属名(日本語) :株式会社アクロスケール
Affiliation (English) :ACROSCALE Co., Ltd.

1.概要(Summary)
抗体医薬品の糖鎖は、医薬品の反応性や機能、ADME等に影響する重要な構造因子である。特に非ヒト型糖鎖は免疫原性を有するため、その混入には十分な注意を払わなければならない。しかし、非ヒト型糖鎖を検出する簡便な糖鎖分析・試験法は確立されていない。本研究では、抗体医薬品に混入したGal1-3Gal構造を有する非ヒト型糖鎖を用いてその定量評価法について検討した。

2.実験(Experimental)
二次元NMRを含めた各種NMRの測定はJEOL ECA-800分光計を用いて行った。質量分析はブルカー社製solariX 9.4TのFT-ICR MS装置を用いてESI(Electro Spray Ionization、エレクトロスプレーイオン化)法にて行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
Fmoc化された2分岐N結合型糖鎖から、Galα1-3Gal構造(図1)を有する数種類の非ヒト型糖鎖標準品を合成した。Galα1-3Galの同定は、各種NMRスペクトル(図2)と質量分析(図3)により行った。
糖鎖の定量評価には、蛍光検出法と質量分析法を併用した。蛍光標識剤として、2-Aminobenzamide (2-AB) 及びGlycosylamineを用いて検出感度を比較した。合成した非ヒト型糖鎖標準品を基準にして、数種類の抗体医薬品に含まれる糖鎖を分析した。抗体の糖鎖は、ペプチドN-グリコシダーゼF(PNGase F)酵素によって切り出し、標識化した。
質量分析による検出感度は、Glycosylamine化糖鎖が2-AB化糖鎖より数倍優れていた。また、同一質量のGlycosylamine化糖鎖でも、糖鎖結合様式の違いをLCにより区別できた。そして、数種類の抗体医薬品に含まれる糖鎖を分析した結果、Glycosylamine化糖鎖標識によって、抗体医薬品に含まれる結合様式の異なる糖鎖の定量評価も行えることがわかった。

図1. Gal1-3Galの分子構造.

図2. Gal1-3Galの1H NMR(上)、13C NMR(中)、TOCSY(TOtal Correlation SpectroscopY、下)スペクトル.

図3. Gal1-3GalのFT-ICR-MSスペクトル.

4.その他・特記事項(Others)
本研究は「平成28年度研究設備の試行的利用事業」の助成を受けて実施されました。ここに記して,感謝の意を表します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
抗体医薬品の糖鎖解析、坂本泉、來間利江、上松亮平、門馬洋行、吉田慎一朗、權垠相、日本薬学会第137年会、仙台、2017年3月。

6.関連特許(Patent)
なし。

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