利用報告書
課題番号 :S-17-MS-1091
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :糖鎖-蛋白質相互作用を利用した薬物送達技術の開発
Program Title (English) :Development of a glycan-protein interaction based drug delivery system
利用者名(日本語) :安藤弘宗1), 田中友理2)
Username (English) :H. Ando1), Y. Tanaka2)
所属名(日本語) :1)岐阜大学研究推進・社会連携機構生命の鎖統合研究センター, 2) 岐阜大学大学院応用生物科学研究科
Affiliation (English) :1) G-CHAIN, Gifu Univ. 2) Dept of Applied Bioorganic Chemistry, Gifu Univ.
1.概要(Summary )
【目的】細胞表面の糖鎖は、細胞、組織特異的に発現し、細胞表面での幅広い生体界面反応の重要な媒介分子として機能している。その媒介機能の本質は、特異的な糖鎖―タンパク質または糖鎖―糖鎖相互作用である。本研究課題では、糖鎖―タンパク質相互作用を利用して、新たな薬物送達法を開発することを目的としている。特に、リポソームなどの薬物キャリアーを細胞組織指向性の分子で表面修飾した標的指向性キャリアーを用いない、薬物を送達する方法論の開発を目的としている。
【方法・計画】癌細胞に高発現しているレクチンを標的として、そのリガンドとなる糖鎖を集積した樹状クラスター(デンドロン)を指向性モジュールとして、中分子、高分子薬物と複合化させ、細胞組織特異能をin vitro, in vivoの系で評価することとした。本利用課題では、糖鎖デンドロンと蛋白質との親和性を評価、解析する目的で、等温滴定カロリメーターによる熱量測定を行うこととした。
2.実験(Experimental)
使用した機器名:MicroCal iTC200(Malvern社)
合成した糖鎖デンドロン体二種(糖鎖価数:4および8)と対照分子(糖鎖価数:1)を用いてレクチンとの結合をITCによって測定した。
測定は、各三回行い、糖リガンドと緩衝液(透析外液)による熱量発生も測定し、測定データとの差分を求め、差分値を用いてデータ解析を行った。データ解析ソフトは、Origin iTC200を用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ITC測定によって、各糖鎖分子の結合解離定数は次のようになった。陽性対照分子(1価の糖鎖リガンド)43.1 µM、4価の糖鎖デンドロン16.3 µM、8価の糖鎖デンドロン4.57 µM。糖鎖の価数の増加によって、結合が増強される事が以上の結果より示された。一方、算出された結合比(N)から、4価のデンドロン体1分子に対し、レクチンが2分子、8価のデンドロン体1分子に対し、レクチン4分子が結合している事が示された。このことから、結合の更なる増強のためには、担持された各糖鎖リガンドがレクチンの糖鎖認識部位に結合可能な空間配置を採り得るデンドロン設計(分岐点からの糖鎖リガンドの距離、スペーサーの柔軟性など)の再検討が必要である事が示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
本研究課題は、AMED革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業の委託を受けて行われたものです。本実験の実施に当たり、共同研究者である分子科学研究所加藤晃一博士、矢木真穂博士のご指導ご協力を頂きました。ここに感謝申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 田中 友理, 前田 雄介, 今村 彰宏, 石田 秀治, 上野 義仁, 安藤 弘宗: 薬物送達システムへの応用を指向した新規糖鎖デンドロンの開発研究、2A20p09, 日本農芸化学会2018年度年会、名城大学(愛知)、平成30年3月16日
6.関連特許(Patent)
なし