利用報告書
課題番号 :S-16-NM-0105
利用形態 :技術補助
利用課題名(日本語) :細胞-足場基材界面における局所pH変化の検出
Program Title (English) :Monitoring of local pH change at the at the interface of cells and substrate
利用者名(日本語) :佐竹 皓宇
Username (English) :H. Satake
所属名(日本語) :東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻
Affiliation (English) :Department of Materials Engineering, University of Tokyo
1.概要(Summary)
我々の研究グループでは、イオン感応型電解効果トランジスタ(Ion Sensitive Field Effect Transistor; ISFET) を用いて、そのゲート電極上に細胞を培養することで細胞の代謝挙動を界面電位変化として計測することに成功してきた。これはエネルギー代謝活動に伴う乳酸およびCO2の細胞外への放出により細胞-ゲート電極界面に局所的にpHの低い領域が形成され、これをISFETが検出するという原理に基づく。しかしながら細胞-ゲート電極界面でのpH変化はこれまで他手法を用いた検証がなされておらず、FETの検出シグナルが真にpH変化に由来するか不明確なままである。そこで本課題では細胞-足場基材界面でのpH変化の様子を光学的に検出することで、ISFETによる代謝計測の妥当性の評価を試みた。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
共焦点レーザー顕微鏡
全反射蛍光顕微鏡(TIRF)
【実験方法】
ガラスボトムディッシュ上に継代したウシ膝関節由来軟骨細胞を5-hexa-decanoylaminofluorescein (HAF)を用いて染色した。共焦点レーザー顕微鏡で染色の状態を確認した後、培養を行いながらTIRFによる蛍光観察を行った。細胞-足場基材界面の蛍光を観察し、その強度変化から界面pH変化の評価を行った。特に細胞外基質産生誘導因子(L-Ascorbic acid phosphate magnesium salt n-hydrate(APM) およびInsulin transferrin selenium ethanolamine solution(ITS)) の培地への導入の有無により生じるpH変化の差に注目した。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
共焦点レーザー顕微鏡で得られたz-stack像より、HAF分子が細胞膜に局在していることが確認された(Fig.1)。HAF分子の疎水性の高い炭化水素鎖が細胞膜に埋まることで、pH感応部位を細胞膜外に向ける形に修飾されたことが考えられる[1]。
Fig.2にTIRFで計測された各条件での蛍光強度比の変化を示す(測定開始時点での蛍光強度(Fo)に対する比をプロットした)。基質産生誘導因子を導入した場合において、導入しない場合に比べ蛍光強度比が培養数時間後に低下することが確認された。HAF分子はpHが酸性側に移動するほど消光することが知られており、今回計測された蛍光強度比の低下は誘導因子の導入により細胞-足場基材界面のpHが低下したことを示すと考えられる。この結果はISFETを用いた計測結果と定性的に一致している[2]。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
[1] A.K.Genz et al., J.Physiol 517.2 (1999) 507-519.
[2]H.Satake et al., JJAP 56(2017) 04CM03
謝辞
本課題研究ではリ コウラン様から共焦点レーザー顕微鏡およびTIRFの使用トレーニングを受講した。さらに顕微鏡観察や細胞サンプル調製、蛍光画像の評価法についてのディスカッションも行った。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 佐竹 皓宇, 細胞/ゲート電極界面における水素イオン挙動の評価, 第64回応用物理学会春季学術講演会(2017.3.14)
6.関連特許(Patent)
なし







