利用報告書
課題番号 :S-16-NM-0048
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :細菌によるヒドラジド化合物代謝機構の解明
Program Title (English) :Analysis of a hydrazide compound transport system in bacteria
利用者名(日本語) :矢嶋俊介
Username (English) :S. Yajima
所属名(日本語) :東京農業大学 応用生物科学部
Affiliation (English) :Faculty of Applied Bio-Sciences, Tokyo University of Agriculture
1.概要(Summary)
ヒドラジン (H2NNH2) は有機合成化学の分野において、還元剤、求核剤として重要な化合物である。ヒドラジン誘導体のうち、ヒドラジンとカルボン酸が脱水縮合した構造をもつ化合物をヒドラジド (R1C(=O)NR2NR3R4)と呼ぶ。マレイン酸ヒドラジドはマレイン酸 (C2H2(COOH)2)とヒドラジンによって合成され農薬や除草剤に用いられている。またisonicotinic acid hydrazideは安価で入手しやすい結核の治療薬として有名である。天然のヒドラジド誘導体としてはマッシュルームAgaricus bisporusの有するagaritineが知られている。しかし、これらの物質の生体における代謝や生合成については未解明な部分が多い。isonicotinic acid hydrazideはラットの肝臓のP450によってisonicotinic acidとhydrazineに分解されることや、ウサギが有するアミダーゼにより分解されることが示唆されているが、その詳細は明らかとなっていない。近年、C=N結合をもつ化合物の分解が可能な酵素を見いだすためにヒドラゾンやヒドラジドを資化できる微生物のスクリーニングが行われ、アシルヒドラジドの一つを唯一の炭素源とした培地で生育可能な微生物、Microbacterium sp.が単離された。その後、当該菌のゲノム解析を行い、そのヒドラジド化合物代謝に関わると考えられる遺伝子群を同定した。そこで、本課題では、特に化合物の菌体内への取り込みを担うと考えら得るトランスポーターについて基質の結合特性に関する解析を試みた。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
Biacore X100(表面プラズモン共鳴バイオセンサー)
【実験方法】
Microbacterium sp. 由来のトランスポーターを構成する、基質結合サブユニット(substrate binding subunit; SBS)を大腸菌において組換え体蛋白質として発現させ精製した。His x 6 tagがついており、Sensor tip NTAを使用した。しかし、結合が弱かったため、その後アミンカップリングを行い、SBSを固定し用いた。
アナライトの濃度を変化させ、マルチサイクル法にて測定した。得られたセンサーグラムをアフィニティ解析にかけることで、解離定数を計算した。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
Microbacterium sp. ではヒドラジドを加水分解してできる生成物が同定されている。そこで、基質であるヒドラジドと、その分解生成物をそれぞれアナライトとして用い、解離定数の決定を試みた。その結果、基質であるヒドラジドでは解離定数が算出されたが、分解生成物では値が得られず、結合しない可能性が考えられた。
4.その他・特記事項(Others)
実験にあたっては、箕輪貴司博士、服部晋也博士、李香蘭博士、森田浩美氏にお世話になり、装置使用のトレーニングで協力を頂いた。また、SBSのセンサーチップへの固定化や、アフィニティ解析の採用など、実際の実験、解析の面でも多くの協力をいただいた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
該当なし
6.関連特許(Patent)
該当なし







