利用報告書

自己形成性を利用したナノ粒子リチウム電池電極材料の開発
園山範之
名古屋工業大学

課題番号 :S-16-NI-06
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :自己形成性を利用したナノ粒子リチウム電池電極材料の開発
Program Title (English) :Development of new electrodes with self-assembly for lithium battery
利用者名(日本語) :園山範之
Username (English) :Noriyuki Sonoyama
所属名(日本語) :名古屋工業大学
Affiliation (English) :Department of Life Science and Applied Chemistry,Nagoya Institute of Technology

1.概要(Summary )
NiOなどの金属酸化物ナノ微粒子は、低電位領域においてLiとの可逆的な電極反応(コンバージョン反応)により大容量が得られることが報告されている。しかし、代表的なコンバージョン負極材料の多くは、低電位領域における容量が乏しく、サイクル性が悪いなどといった課題を有する。これらの問題を解決するためには、活物質のナノ微粒子化や異種金属の導入等が有効であることから、当グループではAlやTiなどの軽金属を固溶させた金属酸化物微粒子に注目し、電気化学特性について報告してきたが、これら軽金属の反応性や詳細な構造については関しては未だ明らかではない。本研究ではXAFS解析により決定した複合金属酸化物の微細構造をもとに、AlのXANESスペクトルの計算機シミュレーション結果と実測と比較することにより、金属酸化物微粒子の微細構造について考察を行った。また、同時に母体構造が異なる金属酸化物微粒子の反応をXAFSにより追跡し、構造と電気化学特性との相関について考察を行った。

2.実験(Experimental)
前駆体として、2価の遷移金属と3価のAlを含む層状複水酸化物(LDH)を利用した。M(Ⅱ)-Al LDH(M: Mn, Fe, Ni, Co, Zn, Cu)の合成はアルゴン雰囲気または

大気下で共沈法により行った。また、複合金属酸化物
にカーボンコートを施し、導電性を改善するため、LDHに有機物アニオンを挿入した。得られたM(Ⅱ)-Al LDHを300℃、アルゴン雰囲気下で焼成することにより、MO構造中にAlの固溶した複合金属酸化物を得た。LDHと焼成体の複合金属酸化物の同定は粉末X線回折測定(XRD)により行い、電池特性は焼成体と導電助剤のアセチレンブラックを重量比1:1で混合した合剤をCu箔に塗布して電極とし、対極にLi箔、電解液には1MのLiPF6を含むEC/DEC(体積比3:7)混合溶液を用いてコインセル電池を組み立て、充放電測定を行うことにより調べた。また、充放電による試料中の金属の価数の変化をXAFS測定により調べた。XAFSシミュレーションは構築したモデルの電子状態を、WIEN2kを用いて計算することにより得た。

3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig. 1にMn-Al, Zn-Al系複合酸化物の充放電曲線を示す。両系とも初回充電時には1000 mAh/gを越える容量が得られ、Mn,Znに加え、Alも酸化還元に寄与していると考えられる。Mn-Al系は30サイクル後も1000 mAh/g以上の容量を維持したが、Zn-Al系はサイクルと共に容量が低下し、30サイクル後には亜鉛のみがコンバージョンした場合の容量まで低下した。それぞれの金属のK端におけるXANESスペクトルを測定すると、Mn-Al系では、Mn,Al K端のXANESスペクトルは可逆な変化を示すのに対し、Zn-Al系ではAl K端のXANESスペクトルは一旦還元されるものの酸化時に可逆な変化を示さない。以上の結果は、Zn-Al系では放電により生じたAl微粒子が可逆に反応しないことを示唆している。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) E. Ni; T. Tsukada; N. Sonoyama, Int.J.of Nanotechnology, Vol.13,(2016) pp.533-544
(2) 園山範之、小笠原佳孝、青井智克、吉田怜史、塚田哲也,18th international meeting on lithium battery, 平成28年6月23日.
(3) 園山範之、小笠原佳孝、青井智克、吉田怜史、塚田哲也, International Conference on Small Science 2016平成28年6月28日
(4) 園山範之、小笠原佳孝、青井智克、吉田怜史、塚田哲也, PRiME 2016, 平成28年10月7日.
(5) 園山範之,SPACRA2017, 平成29年2月26日.
ほか10件

6.関連特許(Patent)
なし

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