利用報告書

自己集合体を有機合成反応場とした位置選択性・立体選択性制御を目指して
林 啓太1), 太田 ひかる1), 宇田 亮子1), 直江 一光1), 中村 秀美1)
1) 奈良工業高等専門学校物質化学工学科

課題番号 :S-20-NR-0018
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :自己集合体を有機合成反応場とした位置選択性・立体選択性制御を目指して
-基質および触媒添加による自己集合体構造への影響-
Program Title (English) :Application of aggregates as an organic solvent to regulate regioselectivity
and stereospecificity -Observation of aggregates containing organic
compounds-
利用者名(日本語) :林 啓太1), 太田 ひかる1), 宇田 亮子1), 直江 一光1), 中村 秀美1)
Username (English) :K. Hayashi1), Hikaru Ota1), R. M. Uda1), K. Naoe1), H. Nakamura1)
所属名(日本語) :1) 奈良工業高等専門学校物質化学工学科
Affiliation (English) :1) Department of Chemical Engineering, National Institute of Technology,
Nara College

1.概要(Summary)
界面活性剤は水溶液中においてミセルやベシクルなどの自己集合体を形成する.これら自己集合体は有機合成における反応場としての応用が可能であり,我々の研究室ではSpan/Tween系界面活性剤から構成される自己集合体を反応場として過酸化水素を用いたエポキシ化を検討している.自己集合体はその構造によって安定性や親水・疎水性といった様々な特性が変化するため,構造の同定は自己集合体の応用を検討するうえで非常に重要である.Span系界面活性剤,およびTween系界面活性剤を種々の割当で混合することで水溶液中において球状ミセルや球状ベシクル,チューブ状ベシクルといった様々な自己集合体が調製可能であることを報告しているが[Colloids Surf. B, 152, 269–276 (2017)],基質となるステロイド分子を添加すると自己集合体の構造が変化する可能性がある.そこで本研究では,これらSpan/Tween系界面活性剤から構成される自己集合体にcholesterolを添加した場合の自己集合体構造変化を観察した.

2.実験(Experimental)
Span系界面活性剤,Tween系界面活性剤を種々の割合で混合し,さらに10 mol% cholesterolを添加して凍結融解法により自己集合体を調製した.また,エクストルーダーにより粒子径を100 nmに調整した.これら自己集合体をcryo-TEM (JEM-3100FEF)により観察した.

3.結果と考察(Results and Discussion)
Cryo-TEMにより観察した結果をFigure 1に示す.Span 20/Tween 20界面活性剤から自己集合体を調製した場合,Tween 20を多く含む場合では球状ミセルを形成し,Span 20の割合が増加するに伴って,球状ベシクル,チューブ状ベシクルへと変化したが,cholesterolを含有している場合では棒状ミセルから球状ベシクルへと変化する様子が確認された.また,Span 40/Tween 40界面活性剤から自己集合体を調製した場合,Tween 40を多く含む場合では球状ミセルを形成し,Span 40の割合が増加するに伴って棒状ミセル,レンズ型ベシクル,球状ベシクル,多面ベシクルへと変化したが,cholesterolを含有している場合では棒状ミセルから球状ベシクルへと変化する様子が確認された.

4.その他・特記事項(Others)
本研究は2020年度試行的利用の採択を受け,NAISTナノテクノロジープラットフォームの支援を受けて行いました.またcryo-TEMによる観察を行っていただいた技術専門職員 藤田咲子氏に深く感謝の意を表します.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし.

6.関連特許(Patent)
なし.

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