利用報告書

色素利用可能なヘテロ含有化合物の構造決定及び反応機構解析
野元昭宏, 小川昭弥
大阪府立大学大学院工学研究科

課題番号                :S-19-NU-0033

利用形態                :技術代行

利用課題名(日本語)    :色素利用可能なヘテロ含有化合物の構造決定及び反応機構解析

Program Title (English) :

利用者名(日本語)      :野元昭宏, 小川昭弥

Username (English)     :

所属名(日本語)        :大阪府立大学大学院工学研究科

Affiliation (English)  :

 

 

1.概要(Summary )

これまでに、天然物質であるクロリン誘導体を光感受性物質として用い、さらにがん細胞へ取り込まれやすいことが知られているグルコース類をクロリン誘導体へ導入することで集積性を向上させた糖連結クロリン誘導体の開発、評価を行ってきた。しかしながら、水溶性が低く、人体での使用が認められている界面活性剤で可溶化した場合、動物実験では投与した動物にアレルギー症状が見られるなど問題がある。そこで、薬剤の性質を保持したまま可溶化する手法として、グルコースを多糖に変えることで可溶化に成功した。

 

2.実験(Experimental)

マルトトリオース導入についてはこれまでと同様、メルカプト基を介して結合させることとした(図1)

(図1)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既報に従って、4段階(Total 55%)でメルカプト導入アセチル保護マルトトリオース(Ac-Mal3-SH)を得た。次に、アルキルスペーサーの末端のブロモ基との反応を行った。溶媒に塩化メチレン、塩基にトリエチルアミンを用い、室温下4.5時間で反応を試みたが、目的物はほとんど得られなかった。

そこで種々の条件を検討し、溶媒をDMF、塩基には炭酸カリウムを用い反応を行ったところ、室温下24時間の反応において最も収率が向上し、収率40%でアセチル(- OAc)保護体を合成することに成功した。

NMRおよび高分解能質量分析装置(名古屋大学)により目的薬剤の生成、単離を確認した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

当初の条件で反応が進行しなかった理由として、高分解能質量分析から、わずかであるが生成物を確認したため、マルトトリオースの立体障害に原因があると考え、極性溶媒で糖間の相互作用を抑え、塩基をより強いものとすることで反応が進行したと考えられる。

生成したアセチル(- OAc)保護体を、ヒドロキシ(- OH)基に脱保護した最終目的物は、高い水溶性を示し、イヌ乳腺がん細胞を用いた抗がん活性も高いものであった。

 

4.その他・特記事項(Others)

本研究は名古屋大学の坂口佳充機器コンシェルジュ、鳥居実恵技術職員の御協力により推進されました。深く御礼申し上げます。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

増田理人、山本美伽、矢野重信、片岡洋望、鳴海敦、野元昭宏、小川昭弥「PDTのためのマルトトリオース連結クロリンとクロリンe6の金属導入」

第29回金属の関与する生体関連反応シンポジウム(2019年5月31日, 大阪)ポスター賞

 

6.関連特許(Patent)

なし。

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