利用報告書
課題番号 :S-20-NU-0030
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :芳香族アミノ酸を導入したイオンチャネルペプチドの合成と生物活性評価
Program Title (English) :Synthesis and Biological Activity Evaluation of Ion Channel Peptides Containing Aromatic Amino Acid Residue
利用者名(日本語) :重富敬太, 長田聰史
Username (English) :K. Shigedomi, S. Osada
所属名(日本語) :佐賀大学大学院工学系研究科
Affiliation (English) :Faculty of Science & Engineering, Saga University
1.概要(Summary)
イオンチャネルは生体膜上に存在するタンパク質であり、生体膜のイオンの透過において中心的な役割を果たす。近年、ウイルス遺伝子がコードするイオンチャネルタンパク質であるviroporinがウイルスの宿主細胞への感染において必須であることが報告されている。Viroporinは50-100残基程度の小分子であり、芳香族残基を配列中に豊富に含んでいるという特徴をもつ。一方で芳香族残基は生物由来のイオンチャネルにはほとんど含まれていないため、viroporinがもつチャネル機能や膜摂動において重要であると考えられている。当研究室では異常アミノ酸である2アミノイソ酪酸 (Aib, B) を含むペプチドAc-(Aib-Lys-Aib-Ala)-NH2 (BKBA-20)がイオンチャネル活性を示すことを報告した。芳香族残基がチャネル活性や膜摂動活性に与える影響をより詳細に調べるために、BKBA-20の末端部にトリプトファン (Trp, W) を導入した場合とチロシン (Tyr, Y) を導入したペプチドの合成を行い、溶血活性を評価した。
2.実験(Experimental)
マトリックスにCHCAを用いて合成したペプチド検体と混合し、質量分析を行った。
利用装置:マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間 (MALDI-TOF) 型質量分析装置(Bruker社製 MALDI TOF MS autoflex maX)
3.結果と考察(Results and Discussion)
BKBA-20を母体としてトリプトファンとチロシンを異なる位置に導入したペプチドを化学合成した。質量分析により計算値とほぼ一致する質量スペクトルが観測された。
MALDI-TOF MSにより同定したペプチドの溶血活性を測定した。Trpと比較して、Tyr残基の導入はペプチドの溶血活性を低下させた。溶血活性の減少は両末端において顕著に観測された。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本課題は令和元年度分子・物質合成プラットフォーム試行的利用課題として行いました。検体の代行測定について名古屋大学工学部の坂口佳充特任教授,鳥居実恵技術職員のご助力に感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
Keita Shigedomi, Satoshi Osada, Masoud Jelokhani-Niaraki, and Hiroaki Kodama,ACS Omega 2021 6 (1), 723-732
6.関連特許(Patent)
なし。