利用報告書
課題番号 :S-16-CT-0090
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :表面分析における標準物質の基礎数値(仕事関数)の把握
Program Title (English) :Measurement of Workfunction
利用者名(日本語) :武藤正雄1)
Username (English) :M. Muto1)
所属名(日本語) :1) 株式会社 北海光電子
Affiliation (English) :1) Hokkai Photoelectron CO., Ltd.
1.概要(Summary)
弊社では「光電子」をキーワードに、触媒や有機デバイス等のあらゆる分野における表面分析やイメージング、更には化学状態や電気特性測定をも可能とする光放出電子顕微鏡や仕事関数測定装置を「北海道」から発信したい、という思いのもと開発を行っている。これらの装置の性能を証明するためには、標準試料における仕事関数の値が必要不可欠だが、各金属における仕事関数の値は明確にはなっておらず、文献ごとに差異が生じている。そこで、供給先より送られる標準試料において、千歳科学技術大学設置の表面分析装置(大気下光電子分光装置 AC-1)を用いて、標準試料の仕事関数測定を行い、文献値との比較を試みた。
2.実験(Experimental)
今回、測定に使用した標準試料は、金、チタン、ニッケル、マグネシウム、珪素の計5種である。これらの金属板をAC-1にセットし、重水素ランプを光源とする紫外線を大気中にて照射することで、照射光エネルギーごとの光電子数を測定した。なお、本測定はバックグラウンドを測定後、各照射光エネルギーのポイントごとに10秒間隔で光電子数を順次測定する条件下で行った。測定終了時に光電効果によって電子放出が行われたこと、また、光量やエネルギー範囲に問題が無いことを結果より確認した後、最小二乗法より得られた外挿直線とグランドレベルとの交点から仕事関数を決定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
各金属試料より得られた仕事関数は、いくつか文献値に近い値を計測することができたが、複数回測定を行った数値を比較するとばらつきが見られる結果となった。これには先ほど述べた「最小二乗法より得られた外挿直線とグランドレベルとの交点から仕事関数を決定」することが要因の一つであると考えられる。仕事関数を決定する際、バックグラウンド線と勾配線との交点により仕事関数を定めるのだが、測定点に接した線のあてがい方は、相関係数が0.997以上となるように調節はするものの、その微妙な違いによって仕事関数の数値に影響を及ぼしてしまう。このことにより、仕事関数に誤差が生じたものと推測される。本測定では仕事関数の決定には至らなかったが、今後の測定において、精度の高い仕事関数の計測、及び仕事関数が文献により異なることを如何に克服するかが課題となる。
4.その他・特記事項(Others)
・謝辞
本測定を行うにあたり、山﨑 郁乃 技術員にはAC-1の操作方法をご教授頂きました。この場を借りて感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







