課題番号                ：S-20-NM-0038

利用形態               ：技術代行

利用課題名（日本語）    ：表面改質イカ墨色素粒子の粒子径とゼータ電位に関する研究

Program Title (English) ：Study on particle size and zeta potential of surface modified squid ink particles

利用者名（日本語）       ：松浦　俊彦

Username (English)     ：Toshihiko Matsuura

所属名（日本語）        ：北海道教育大学 教育学部函館校

Affiliation (English)  ：Hakodate Campus, Hokkaido University of Education

１．概要（Summary）

毛髪染色に用いられる市販のヘアカラーリング剤の多くは合成物質であり、頭皮への刺激が強い。敏感肌の顧客や美容師は刺激の少ない天然物を用いたヘアカラーリング剤を強く求めている。高純度に精製したイカ墨色素粒子は、平均粒子径が300 nmに揃ったサスティナブル黒色顔料であり、不純物をほとんど含まないことから、イカ墨色素粒子を用いたヘアカラーリング剤の開発が期待されている。利用者らは、イカ墨色素粒子の表面にあるカルボキシル基をアミノ基に置換することで、表面電荷を陽イオン（カチオン）化することに成功している。しかし、表面改質後のゼータ電位を正確に測定できていない。

本研究では、表面改質イカ墨色素粒子の粒子径とゼータ電位を計測し、カチオン化の度合いを定量的に評価することを目的とした。

２．実験（Experimental）

【利用した主な装置】

• レーザーゼータ電位計
• 動的光散乱光度計

【実験方法】

表面改質イカ墨色素粒子の表面電荷を定量的に評価するため、ゼータ電位をレーザーゼータ電位計により測定した。また、動的光散乱光度計を用いて、表面改質イカ墨色素粒子の粒子径を計測した。なお、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、技術代行を依頼して実施した。

３．結果と考察（Results and Discussion）

イカの墨袋から抽出・精製したイカ墨色素粒子のゼータ電位は負の値となった。一方、イカ墨色素粒子の表面にあるカルボキシル基を特許出願技術でアミノ基に置換すると、そのゼータ電位は正の値にシフトした。Fig.1に表面改質イカ墨色素粒子のゼータ電位の測定結果を示す。アミノ基を持つ天然由来高分子をイカ墨色素粒子に付加したところ、その表面改質イカ墨色素粒子のゼータ電位は最大で約60 mVと正の値となった。天然由来高分子の分子量を変えても、ゼータ電位および粒子径に大きな差はみられなかった。本研究により、表面改質イカ墨色素粒子のカチオン化の度合いを評価することができ、ヘアカラーリング剤の開発に不可欠な基礎的知見を得ることができた。

Fig. 1 Zeta potential of surface modified squid ink particles

４．その他・特記事項（Others）

【競争的資金】

松浦俊彦（研究代表者）: 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)機能検証フェーズ試験研究タイプ 令和元年度第１回募集(JST), 染毛剤を代表とするイカ墨の色素材料化の検討 (2019. 9. 2 – 2020. 11. 30).

【参考文献】

2. Matsuura et al., Surface modification of natural ink particles for hair coloring, Jpn. J. Appl. Phys. 58 (2019) SIIB02.

【謝辞】

NIMSの服部晋也さん、小原里美さん、高橋みどりさんには、測定からデータの整理まで迅速かつ丁寧に対応していただきました。ここに記して深謝の意を表します。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）

なし

６．関連特許（Patent）

(1) 松浦俊彦, 上野孝, 柴田昌之, “カチオン付加イカ墨色素粒子及びその製造方法”, 特開2018-145376, 平成30年9月20日（公開日）