利用報告書
課題番号 :S-17-NI-0012
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :複合ナノ粒子の合成と光触媒能の評価
Program Title (English):Synthesis of complex nanoparticles and photo-catalytic properties
利用者名(日本語) :葛谷俊博1), 犬飼英嵩2),濱中 泰2)
Username (English) :T. Kuzuya1), H. Inukai2), Y. Hamanaka2)
所属名(日本語) :1) 室蘭工業大学, 2) 名古屋工業大学
Affiliation (English):1)Muroran Institute of Technology, 2)Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
半導体ナノ粒子の光触媒効果が、環境浄化や水の光分解による水素生成に関して注目を集めている。我々は、高効率な光触媒の候補として局在プラズモンを利用する金属/半導体複合ナノ粒子に着目し、複合ナノ粒子の合成と光学特性の評価を実施している。1)
2.実験(Experimental)
利用した主な装置:UV/VIS/NIR分光光度計(日本分光V570)
実験方法:今回は、複合ナノ粒子の前駆体である硫化銅(Cu2S)ナノ粒子の光触媒効果を評価した。ナノ粒子の光触媒能を確かめるため、メチレンブルー(MB)水溶液を指標として用いた。ナノ粒子中の光励起電子・正孔によってヒドロキシラジカルが生成すると、MBは酸化分解され水溶液が脱色される。そこで、ナノ粒子をMB水溶液に分散させ攪拌しながら可視光を照射し、一定時間ごとにサンプリングして、分光光度計を使ってMBの吸収スペクトルを測定した。吸光度の減少からMBの分解率を求めて、光触媒効果を確認した。
一般にコロイド法で合成したナノ粒子は表面がリガンドと呼ばれる有機分子で保護されている。今回用いた硫化銅ナノ粒子の場合には、ドデカンチオール(C12H26S)分子をリガンドとして使った。リガンドの有無が光触媒能に及ぼす影響を調査するために、ドデカンチオールリガンドを有するas-grownのナノ粒子と、リガンドを除去したナノ粒子を実験に用いた。また、ナノ粒子を加えないMB水溶液についても光照射による脱色の有無を調べた。照射光源は高圧キセノンランプであり、適当なフィルターを使って可視光のみを照射した。
実験は全て実施機関でおこなった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1にMB水溶液と硫化銅ナノ粒子を加えたMB水溶液に対して得られた、MBの分解率と光照射時間の関係を示す。リガンドを除去した硫化銅ナノ粒子を加えると、MBが急激に分解された。一方、リガンドを除去しない硫化銅ナノ粒子を加えても、MBはほとんど分解されなかった。分解率は、ナノ粒子を加えないMB水溶液に光照射を行った場合と同程度であった。ナノ粒子表面に存在するリガンドが、ナノ粒子中に生成した電子・正孔が水や溶存酸素と反応してヒドロキシラジカルを生成させることを阻害したと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
1)葛谷俊博,桑田貴彦,濱中 泰,浅香 透,文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業利用成果発表会,平成29年10月20日
2)T. Kuzuya, T. Kuwada, Y. Hamanaka, S. Hirai,2017 MRS Fall Meeting and Exhibit, 平成29年11月28日
6.関連特許(Patent)
なし