利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1040
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :複合機能材料を志向した有機結晶の構造と物性
Program Title (English) :Structural and physical properties of multi-functional organic crystals
利用者名(日本語) :白旗 崇1), 木下 直哉1)
Username (English) :T. Shirahata1), N. Kinoshita1)
所属名(日本語) :1) 愛媛大学大学院理工学研究科(工学系)
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science and Engineering, Ehime Unversity
1.概要(Summary )
導電性有機結晶において、電荷秩序型の絶縁相に近接する超伝導相の存在が明らかとなっている。我々は分子内における電荷の不均化と物性の相関に興味を持ち、多様なTTF系ドナーを成分とする導電性有機結晶の開発を行っている。本研究課題では右に示したTTF-TSF-TTFトライアド分子1を成分とする導電性有機結晶(1)MF6 (M = P and As)の結晶構造解析を行い、低温の絶縁相では分子内の電荷不均化が生じていることを明らかにした。
2.実験(Experimental)
極微小結晶用単結晶X線回折装置 (Rigaku社製 HyPix-AFC (旧名CCD-3))
導電性有機結晶(1)MF6 (M = P and As)の極微小結晶を用いてX線結晶構造解析を行った。吹き付け型の低温装置を用いて120, 50 Kの温度で回折データを取得した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
(1)MF6 (M = P and As)は室温から120 Kまで温度に依存しない抵抗の温度依存性を示し、120 Kより低温側では半導体的な振る舞いを示す。120および50 Kにおける結晶構造解析を行い、その起源を調査した。
PF6およびAsF6塩ともに120 Kでは単斜晶系、C2/cに属していた。晶系、空間群は296 Kと同じであり、格子定数も温度変化に基づく収縮以外の変化はみられなかったことから、120 Kまでは構造相転移は起きていないことがわかった。一方50 Kでは単斜晶系、P21/nに属しており、構造相転移が起きていることがわかった。120 Kではトライアッド分子1は二回軸上に位置しており、結晶学的に1/2分子独立である。すなわち、二つのTTFユニットは結晶学的に等価である。これに対して50 Kでは、結晶学的に1分子独立であり、二つのTTFユニットは結晶学的に非等価である。荷電状態に鋭敏に応答するTTF骨格中央のC=C結合長を調べると、二つのTTFユニットで0.03 Åの差が生じていた(1.340(11) Å および 1.370(11) Å)。これはC=C結合長がより長いTTFユニットに、より多くの電荷が偏っていることを示唆している。すなわち、トライアッド分子内で電荷の不均化が起きていると考えられる。結晶構造解析の結果に基づいてバンド計算を行うと、120 Kでは半金属的なフェルミ面が計算されたが、50 Kではフェルミ準位でギャップが生じてフェルミ面は消失した。以上の結果から、絶縁化は分子内の電荷不均化と周期変調に伴うエネルギーギャップの生成に起因すると考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
本研究はJSPS科研費(15H03798、19K05406)および愛媛大学電池材料開発研究ユニット・有機超伝導体研究ユニットの助成を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) N. Kinoshita, T. Shirahata, and Y. Misaki, Chem. Lett., Vol. 48 (2019), p.p. 985-988.
(2) T. Naito, N. Watanabe, Y. Sakamoto, Y. Miyaji, T. Shirahata, Y. Misaki, S. Kitou, and H. Sawa, Dalton Trans., Vol. 48 (2019), p.p. 12858-12866.
6.関連特許(Patent)
なし







