利用報告書

複核金属内包フラーレンアニオンのスピン状態の解明
髙井良也,吉田俊,兒玉健
首都大学東京大学院理学研究科

課題番号 :S-19-MS-1078
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :複核金属内包フラーレンアニオンのスピン状態の解明
Program Title (English) :Study of spin states of di-metallofullerene anions
利用者名(日本語) :髙井良也,吉田俊,兒玉健
Username (English) :R. Takai, S. Yoshida, T. Kodama
所属名(日本語) :首都大学東京大学院理学研究科
Affiliation (English) :Department of Chemistry, Tokyo Metropolitan University

1.概要(Summary )
 本研究では,金属原子を2個内包した複核金属内包フラーレンアニオンのスピン状態を解明することを目的とした。対象は大きく分けて二つあった。
 一つ目は,Dy2@Cn(n = 78 or 80)アニオンである。直流SQUID測定を首都大で行った結果,単分子磁石的挙動を示すことが分かっていた。分子研では直流SQUID測定では得られない短い緩和時間領域についての情報を得るため,交流SQUID測定を行い,より広い温度領域での緩和の情報を得ることができた。コヒーレンス時間の情報を得ることを目的として,パルスESR測定も行ったが,シグナルは得られなかった。
 二つ目は,Sc2C80アニオンである。こちらについては2種類の異性体が存在し,極低温におけるESR測定を行い,シミュレーションを行った。その結果,詳細なパラメータを得ることができた。

2.実験(Experimental)
 測定試料(Dy内包フラーレン,Sc内包フラーレン)は首都大学東京において生成・単離し,SQUID測定とESR測定を分子研において行った。
 SQUID測定:Quantum Design MPMS-XL7
 ESR測定 :Bruker E680, E500, EMX Plus

3.結果と考察(Results and Discussion)
 Dy2@C80アニオンの31 Kにおける磁化の虚数成分の周波数依存性を図1に示す。実線は単緩和を仮定したフィッティング曲線である。26 Kから32 Kの範囲で温度変化測定を行い,得られた緩和時間についてアレニウスプロットを行うことで,活性化エネルギー(Ea)が約600 Kであることが分かった。Dy2@C78アニオンについても同様の測定を行ったところ,Eaが約180 Kであることが分かり,ケージ構造によってEaに大きな違いが生じることが明らかとなった。
 Sc2C80アニオンの異性体1の10 KにおけるQ-band ESEFSスペクトルを図2に示す。二つのSc核(I=7/2)による大きな15本の超微細構造分裂が見える。シミュレーションの再現性もおおむね良好である。異性体2についても同様の測定を行い,シミュレーションも行った。
得られたパラメータの解釈が今後の課題である。

4.その他・特記事項(Others)
 本研究の実験の実施にあたって,分子科学研究所機器センターの藤原基靖さん,新潟大学の古川貢先生に
大変お世話になりました。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 髙井良也, 東中隆二, 青木勇二, 菊地耕一,
阿知波洋次, 兒玉健, 第58回フラーレン・
ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム,
2020年3月.
(2) 吉田俊, 古川貢, 菊地耕一, 阿知波洋次, 兒玉健,
第58回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン
総合シンポジウム, 2020年3月.

6.関連特許(Patent)
なし。

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