利用報告書

貴金属薄膜のレーザー加工とその光特性評価
平野祐樹,内田多佳子, 井村考平
早稲田大学大学院先進理工学研究科

課題番号 :S-15-MS-1045
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :貴金属薄膜のレーザー加工とその光特性評価
Program Title (English) :Optical characterization of laser-fabricated metal thin film
利用者名(日本語) :平野祐樹,内田多佳子, 井村考平
Username (English) :Yuki Hirano, Takako Uchida, Kohei Imura
所属名(日本語) :早稲田大学大学院先進理工学研究科
Affiliation (English) :Waseda University

1.概要(Summary )
 貴金属メソ構造体は,その形状やサイズに依存して物性が変化するため,これを簡便かつ自在に加工する技術が求められている。本課題では,レーザー加工による構造体の微細加工を目指した。試料として,金薄膜と金ナノ粒子を用いた。前者は,波長可変ピコ秒レーザーを用いて加工した。一方,後者は,ナノ秒レーザーを用いて加工した。加工した試料の形状は,走査型電子顕微鏡(SEM)観察により評価した。金薄膜の加工では,レーザー光強度の調整により加工領域の制御が可能であることを,ナノ粒子の加工では,ナノ粒子の形状を非常に精密に加工できることを明らかにした。さらに,加工したナノ粒子の集合体を作製し,強い光閉じ込め効果に起因する特異な光学特性が誘起されることを明らかにした。
2.実験(Experimental)
 金薄膜のレーザー微細加工を行うために,XYステージ,対物レンズを組み合わせて顕微加工システムを作製した。これに,光源としてピコ秒レーザーシステム(波長:250~10,000 nm,繰り返し周波数:1 kHz,パルス幅:2~3 ps,施設利用公開装置)を用いて加工を行った。また,ナノ秒パルスレーザー(波長:532 nm,繰り返し周波数:10 Hz)を用いて金ナノ微粒子(直径100 nm)の加工(レーザーアブレーション)を行った。加工後のナノ構造体の形状は,電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM, JEOL JSM-6700F, 施設利用公開装置)を用いて評価した。作製した構造の光学特性は,反射分光測定,非線形発光測定,ラマン散乱測定により評価した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 図1(a)に,作製した金マイクロホール構造のSEM像を示す。高繰返(80 MHz)フェムトレーザー加工よりも低平均出力で加工が可能であること,検討した加工条件ではホール辺縁部に不要な突起(バリ)が生じること,微細化には今後さらなる条件検討が必要であることが明らかとなった。
 図1(b)にレーザーアブレーション後の金ナノ粒子のSEM像を示す。アブレーション前の形状と比較して,直径が小さくなること,また真球度が向上することが明らかとなった。作製した金ナノ粒子の自己集合体を作製しその分光特性評価を行った結果,粒子間の相互作用に起因する特異な光学特性を示すこと,また強い光閉じ込め効果に起因する増強光学過程や非線形発光を示すことが明らかとなった。

図1.レーザー加工後の(a)金薄膜と(b)金ナノ粒子の走査電子顕微鏡像。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Uchida, Y. Ichikawa, K. Imura, Chem. Phys. Lett. 638, 253-257 (2015).
(2) 内田多佳子,井村考平, テンプレートフリー金ナノ粒子配列構造体の作製とその光励起空間モードの可視化,第9回分子科学討論会, 平成27年9月16日.
(3) 平野祐樹,井村考平, レーザー加工による金属メソ円形構造体の作製とその顕微分光研究,第9回分子科学討論会, 平成27年9月16日.
6.関連特許(Patent)
なし。

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