利用報告書

走査型透過軟X線顕微鏡によるカビ臭産生シアノバクテリアの原核細胞オルガネラの同定
竹本 邦子1), 吉村 真史2)
1) 関西医科大学医学部物理学教室, 2) 立命館大学総合科学技術研究機構

課題番号 :S-16-MS-2021
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :走査型透過軟X線顕微鏡によるカビ臭産生シアノバクテリアの原核細胞オルガネラの同定
Program Title (English) :Identification of Prokaryotic Organelles of Musty-Odor Producing Filamentous Cyanobacterium Using STXM
利用者名(日本語) :竹本 邦子1), 吉村 真史2)
Username (English) :K. Takemoto1), M. Yoshimura2)
所属名(日本語) :1) 関西医科大学医学部物理学教室, 2) 立命館大学総合科学技術研究機構
Affiliation (English) :1) Kansai Medical University, 2) Ritsumeikan University

1.概要(Summary )
京阪神地区の水道水源地である琵琶湖には,初夏から秋にかけ大増殖し,水道水にカビ臭をもたらす藍藻綱ユレモ目に属する糸状のシアバクテリアがいる。このシアノバクテリアは、これまでPhormidium tenue と分類されてきたが、2016年、新種のPseudanabaena foetida nom. nud.であることが分かった。このため、P. foetidaの生態や微細構造など不明な点が多い。これらの情報は、カビ臭対策の観点からも重要である。カビ臭物質生成能は、細胞周期や培養条件と相関があることが知られている。我々は、これまでに実施した透過型X線顕微鏡観察実験で、P. foetida 細胞中に、酸素を蓄積した直径1m以下の顆粒体と、炭素を蓄積した構造体を確認している。今回、炭素を蓄積した構造体を、走査型透過X線顕微鏡ビームラインBL4Uで観察した。酸素(O)と炭素(C)のK吸収端のXANES(吸収端近傍微細構造)分析を行い、細胞内で炭素に加え、カリウム(K)の局在を確認した。

2.実験(Experimental)
培養には、琵琶湖から単離したP. foetidaを、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターにおいて継体培養してきた細胞を使用した。藍藻用のCT 培地で、20℃、20 mol photons/m2 s (12h明/12h暗)の条件の下、4週間静置培養を行った。観察には、1 L細胞懸濁液をシリコン窒化膜(SiN膜)上に滴下後,風乾した試料を用いた。
全ての観察は、走査型透過X線顕微鏡ビームラインBL4Uで、常温の真空雰囲気下で行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
P. foetidaの細胞をOのK吸収端付近の532eVで観察し、細胞内で高いX線吸収を示す帯状の構造体を確認した。細胞長軸方向に伸びた帯状の一部が細くなり、絶えたものもあった。帯の中心付近の酸素欠乏部をCのK吸収端より高いエネルギーで観察したところ、高いX線吸収が確認できた。酸素欠乏部と帯状部のC XANESスペクトルはほぼ同じで、285 eV(C=C)、288.2eV(C=N)、288.5eV(C=O)でピークを確認することができた。CのK吸収端より高エネルギー側のスペクトルを確認したところ、酸素欠乏部だけ、297 eV付近と299 eV付近にKによるピークを確認した。Kは、浸透圧調整やタンパク質合成および細胞分裂に関連した元素であることが知られている。今後は、さらに詳細な解析を進め、この構造体の同定を進める予定である。

4.その他・特記事項(Others)
P. foetidaの培養には、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの一瀬諭博士の協力を得て行われました。感謝いたします。本研究の一部を遂行するにあたり、JSPS科研費 15K00572の助成を受けた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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