利用報告書

超分子の示す磁性に関する研究
加藤立久1), 兒玉健2) , 古川貢3)
1)京都大学, 2)首都大学東京, 3)新潟大学

課題番号 :S-15-MS-1027
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :超分子の示す磁性に関する研究
Program Title (English) :Magnetic Properties of Super Molecules
利用者名(日本語) :加藤立久1), 兒玉健2) , 古川貢3)
Username (English) :T. Kato1), T. Kodama2), K. Furukawa3)
所属名(日本語) :1)京都大学, 2)首都大学東京, 3)新潟大学
Affiliation (English) :1) Kyoto University, 2)Tokyo Metropolitan University, 3) Niigata University

1.概要(Summary )
  分子錯体(超分子)中に複数のラジカル電子を持っている場合,スピンが結合して特徴的な分子磁性を示す.電子スピン共鳴(ESR)分光法を用いて,複核の金属内包フラーレンGd2@C80とGd2@C78のアニオンラジカルについて,結合電子系のスピン状態を明らかにすることができた.

2.実験(Experimental)
X-band ESR Bruker E-500, Q-band ESR Bruker E-680 を用いた,CWモード並びにPulsed モード電子スピン共鳴測定を,液体ヘリウム使用Oxford 900温度可変クライオスタットを用いて極低温条件で行った.

3.結果と考察(Results and Discussion)
 Gd2@C80とGd2@C78のアニオンラジカル((Gd2@C80)-, (Gd2@C78)-)について,Q-バンド・パルスESR装置を用いて電子スピンエコー磁場スキャン(ESEFS)スペクトルを記録した.その結果,2個のGd イオンの4f 軌道を半占有する14 個のラジカル電子と還元電子の合計で15個の電子スピンが強磁性的に結合したESEFSスペクトルが得られた.
 以下の図に示すスペクトルが得られ,複数のラジカルスピン間の微細構造で特徴付けられるものであった.

(Gd2@C80)-のESEFSスペクトル

(Gd2@C78)-のESEFSスペクトル

それぞれのESEFSスペクトルを計算機にてシミュレーションし,微細構造パラメータを決定することに成功した.その結果,(Gd2@C80)-の軸対称性からのズレを表すパラメータEが,(Gd2@C78)-の値より大きいことをつきとめた.この結果は,2個のGd イオンの4f 軌道を半占有する14 個のラジカル電子と還元電子の強磁性的なスピン結合構造を明らかにする重要な情報を与えている.

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 山口貴久,中鳥なつみ*1,三谷拓示*1,菊地耕一*1,兒玉健*1,古川貢*2,加藤立久,第54回電子スピンサイエンス学会年会SEST2015,平成27年11月3日.
(2) 山口貴久,中鳥なつみ*1,三谷拓示*1,菊地耕一*1,兒玉健*1,古川貢*2,加藤立久,第50回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム,平成28年2月20日.

6.関連特許(Patent)
なし

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