利用報告書

身体運動特異的に発現する損傷軸索再生の促進因子の探索
峯岸雄基1), 金村尚彦 1), 加納拓馬1)

課題番号                :S-20-NM-0039

利用形態               :機器利用

利用課題名(日本語)    :身体運動特異的に発現する損傷軸索再生の促進因子の探索

Program Title (English) :Exploring the factors that promote the regeneration of damaged axons that are expressed specifically in physical exercise

利用者名(日本語)      :峯岸雄基1), 金村尚彦 1), 加納拓馬1)

Username (English)     :Yuki Minegishi1), Naohiko Kanemura 1), Takuma Kano 1)

所属名(日本語)        :1) 埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科

Affiliation (English)  :1) Graduate School of Health and Social Services, Saitama Prefectural University

 

 

1.概要(Summary)

末梢神経は、損傷後に高い自己再生能を有するが、完全な機能回復は稀であり、運動機能障害が残存することが多い。臨床場面で用いる理学療法は、神経再生を促進し得るか否かコンセンサスが得られておらず、二次的障害予防のための介入が中心である。齧歯類を対象とした基礎研究では、損傷後早期から低負荷のトレッドミル運動を行うことで、損傷軸索の再生が促進することが報告されてきた。しかし、この運動特異的な軸索再生促進の分子メカニズムは不明な点が多く残されている。そこで本研究では、ラット坐骨神経圧挫モデルを対象に、身体運動特異的に発現する損傷軸索再生の促進因子の探索を行った。

 

2.実験(Experimental)

【利用した主な装置】

【実験方法】

対象 坐骨神経の圧挫損傷を行わない正常群(INTACT群)、坐骨神経圧挫後に自然回復を見る損傷群(SC群)、坐骨神経圧挫後に運動介入を行う運動群(SC-EX群)の3群に振り分けた。SC-EX群は、小動物用トレッドミルを用いて、圧挫3日後より運動介入を行った。フォローアップ後、損傷側の坐骨神経を摘出した。

  1. 定量的プロテオーム解析

圧挫後7日、14日時点で、損傷部位から10mm遠位部の坐骨神経を摘出し、タンパク質保存液に浸漬し、遠心分離機により全タンパク質を抽出した。得られたタンパク質をインライン液体クロマトグラフィー法(LC)とダンデム質量分析(MS)により分析を行った。LC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)解析により、プロテオームダイナミクス全体を解析した。坐骨神経サンプル中のタンパク質やペプチドを同位体標識し、標準サンプルと区別し質量分析を行った。得られたデータから Ingenuity Pathway Analysis (IPA) 解析を行い、包括的にタンパクを解析することで、どのタンパクが発現しているかを探索した。

  1. 組織学的分析

圧挫後3日、5日、7日、14日時点で損傷部位から10mm遠位部の坐骨神経を採取し、10μmの横断切片を作成後、免疫組織化学染色を行った。一次抗体にはNeurofilament 200kDa, clone RT97(NF200)抗体、Transient Receptor Potential Vanilloid 4 (TRPV4) 抗体を用いた。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

  1. 定量量的プロテオーム解析 現在、分析中である。
  2. 組織学的分析 NF200陽性の再生軸索数は、圧挫後7日時点ではSC-EX群はSC群に比べ高値であったが、14日時点では差を認めなかった。TRPV4に関しては、圧挫後5日時点からTRPV4活性化が組織学的に観察された。TRPV4活性化は非運動群で7日後まで持続し、運動群では14日後まで活性化が持続した。今後、プロテオーム解析を進め、運動特異的に発現する損傷軸索再生の促進因子に関して、詳細に検討していく予定である。

4.その他・特記事項(Others)

本研究において、機器使用にあたり、研究計画の相談から装置使用のトレーニング、トラブル対応など技術支援をNIMS竹村氏、服部氏からいただいた。免疫組織化学染色については、報告者の所属機関である埼玉県立大学にて実施した。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

該当なし。

6.関連特許(Patent)

該当なし。

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