利用報告書

近赤外光を有効利用する紅色光合成細菌における光電変換機構の解明
木村行宏, 今西三千絵
神戸大学大学院農学研究科

課題番号 :S-19-KU-0031 (試行的利用 採択通知_07)
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :近赤外光を有効利用する紅色光合成細菌における光電変換機構の解明
Program Title (English) :Mechanism of photoelectric conversion of near infrared light in the light-harvesting complex of photosynthetic purple bacteria
利用者名(日本語) :木村行宏, 今西三千絵
Username (English) :Y.Kimura, M.Imanishi
所属名(日本語) :神戸大学大学院農学研究科
Affiliation (English) :Graduate school of agrobioscience、Kobe University

1.概要(Summary )
地球に降り注ぐ太陽光の約4割は近赤外光であり、これらは未利用のエネルギー資源である。紅色光合成細菌は植物やシアノバクテリアと異なり、このエネルギーの低い近赤外光をuphillエネルギー移動により高いエネルギーに変換して炭酸同化を営んでいる。この分子機構を明らかにすることにより、近赤外光を用いた新しいエネルギー資源の創出が期待される。
 本研究では、紅色光合成細菌の中でも非常に低エネルギーの近赤外光で光合成を営むTrv.strain970に着目し、その心臓部である光捕集1反応中心複合体(LH1-RC)を研究対象とした。近赤外領域における効率的な光電変換反応機構の解明に必要な情報を獲得するため、850-1000nmにおける光捕集1反応中心複合体の蛍光発光および蛍光励起スペクトルを測定し、通常では観測できない反応中心複合体の吸収エネルギーを捉えることにより、uphillエネルギー移動のメカニズムを明らかにすることを目的とした。
2.実験(Experimental)
 Trv.strain970由来Ca2+結合型LH1-RCおよびCa2+除去型LH1-RCを調製し、HORIBA-JOBIN YVON NanoLOG-EXT蛍光分光装置を用いて、蛍光発光および蛍光励起スペクトルを測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 Trv.strain970細胞を可溶化し、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、高純度LH1-RCを得た。LH1吸収極大を970nm付近に示すCa2+結合型LH1-RC(コントロール)からEDTAでCa2+除去し、880nmに吸収極大を示すCa2+除去型LH1-RCを調製した。
 得られた光捕集1反応中心複合体(Ca2+結合型)について、970nmより長波長側に出現する蛍光発光スペクトルを測定した。次に発光極大波長付近でモニタリングし、蛍光励起スペクトルを測定したが、発光強度が弱く、S/Nの良いスペクトルを得ることができなかった。従って、スリット幅を最大限に広げて観測を行ったところ、十分な強度のスペクトルは得られたが、既報の結果とは異なり、複数のバンドが観測された。不純物に由来する可能性は極めて低いことから、Ca2+結合型の中でも相互作用の程度の違いによって、複数の状態が混在している可能性が示唆された。Ca2+除去型についても行ったが、同様に複数のバンドが観測されたことから、測定条件について再検討し、測定を継続する必要があると考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
本研究成果を一部含む内容にかんしては現在論文執筆中である。測定では利光史行助教による懇切丁寧なご支援を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Imanishi,M., Takenouchi,M., Takaichi,S., Nakagawa,S., Saga,Y., Takenaka,S., Madigan,M.T., Overmann,J., Wang-Otomo,Z.-Y., and Kimura,Y., The 57th Annual Meeting of the BSJ, 令和元年9月24日.
(2) 今西三千絵、竹之内瑞貴、高市真一、中川支央里、佐賀佳央、竹中慎治、M.T. Madigan、大友征宇、木村行宏, 第27回光合成セミナー:反応中心と色素系の多様性, 令和元年7月13日.

6.関連特許(Patent)
なし

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