利用報告書
課題番号 :S-16-KU-0027
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :近赤外発光を有するナノ蛍光体の合成
Program Title (English) :Synthesis of near infrared emission nano-phosphor
利用者名(日本語) :稲垣 徹
Username (English) :Toru Inagaki
所属名(日本語) :宇部興産株式会社
Affiliation (English) :UBE Indstries, Ltd.
1.概要(Summary )
In vivo生体イメージングにおいて「人体の窓」域である800~1200nmの近赤外域で蛍光体の励起、発光が可能となれば人体への負荷が低減でき、さらに深部組織の観察も可能となる。本研究においては近赤外励起-近赤外発光を有するナノ蛍光体の合成について検討を行う。
2.実験(Experimental)
ナノ蛍光体としてYVO4:Nd3+,Yb3+およびGdVO4:Nd3+,Yb3+をマイクロリアクター装置による溶液合成法によって合成した。作製した蛍光体は近赤外蛍光分光装置(Fluorolog-NIR)を用いてNIR域における発光特性を評価した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に作製したYVO4:Nd3+,Yb3+およびGdVO4:Nd3+,Yb3+ナノ蛍光体の励起波長600nmでのPLスペクトルを示す。同合成条件であるがGdVO4は発光強度でYVO4の4倍以上の高い発光特性を示す。このことから従来よりも高い発光特性を有するナノ蛍光体を合成することができた。一般的にナノ蛍光体において、粒子径や結晶子径は発光特性を決める重要なファクターであるが、本検討におけるYVO4とGdVO4に粒子径結晶子径について大差ないことを確認している。またバルク蛍光体で比較した場合、YVO4:Nd3+,Yb3+とGdVO4:Nd3+,Yb3+にはほとんど発光特性の差がないことからも本件における発光特性の差はナノ材料特有の現象であると考える。
GdVO4:Nd3+,Yb3+はナノサイズでありながら近赤外光励起によって高い発光特性を有する為、生体イメージングへの応用が期待できる。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T.Inagaki, T.Ishigaki, K.Ohmi, PRiME2016, 3118, 2016年10月3日
(2) 稲垣徹, 石垣雅, 大観光徳, 第64回応用物理学会春季学術講演会 15a-411-6, 平成29年3月15日
6.関連特許(Patent)
(1) 稲垣徹, 石垣雅, 大観光徳, “微粒子分散液及び製造方法”, 特願2017-037319