利用報告書
課題番号 :S-16-NI-26
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :遷移金属カルコゲナイドの局所構造解析
Program Title (English) :Local structural analysis of transition metal chalcogenides
利用者名(日本語) :村山 知里,浅香 透
Username (English) :Chisato Murayama, Toru Asaka
所属名(日本語) :名古屋工業大学
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
最近盛んに研究がなされている硫化モリブデンなども属する遷移金属カルコゲナイドは二次元材料として、特異な物性が期待され、注目を集めている。MPS3の化学組成で表される遷移金属リントリカルコゲナイドも同様に層状化合物であり、層間はvan der Waals力で弱く結合している。そのため層間でへき開しやすく、二次元ナノシートの作製なども可能である。また、遷移金属サイトは様々な磁性イオンで占めることができ、二次元物質の磁性に関する研究の対象としても興味深い。FePS3は室温で単斜晶系の結晶構造をもつ。また、およそ120 Kで反強磁性転移を示す。その反強磁性転移に伴い、格子定数の異方的な変化が観測されている [1]。しかしながら、転移温度以下での結晶構造についての詳細は明らかになっていない。そこで、我々はFePS3の低温相の結晶構造を収束電子回折法により調べた。
2.実験(Experimental)
FePS3の単結晶をイオンミリング法によりTEM試料に調整した。収束電子回折は照射系収差補正器および冷陰極型電子銃を備えたJEOL JEM-ARM200Fを用いて行った。加速電圧は明瞭な収束電子回折パターンを取得するため、80 kVとした。低温相に対する実験には液体窒素試料冷却ホルダーを用いた。回折パターン取得時の試料温度はおよそ100 Kであった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
室温で収束電子回折パターンを取得したところ(図1)、密度高く存在する積層不整により、b軸に平行な2回回転の対称性の観測は困難であったものの、既報のとおり空間群C2/mであることを確認した。100 Kでの収束電子回折パターンにおいて、鏡映面の対称性を観測し、低温相の空間群を絞り込むことに成功した。
4.その他・特記事項(Others)
【参考文献】
[1] S. Bjarman et al., Hyperfine Interactions 15/16, 625 (1983).
【謝辞】本研究は名古屋工業大学 種村眞幸教授のご協力のもと、遂行されました。種村眞幸教授に厚く御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 村山知里, 漆原大典, 浅香透, 福田功一郎, 磯部正彦, 松下能孝, 山本和生, 中村真一, 不破章雄,日本物理学会2016年秋季大会, 平成28年9月15日.
6.関連特許(Patent)
なし。