利用報告書

酸化イリジウムナノ粒子連結布の構造と触媒活性の起源
東 相吾, 紅谷 篤史
株式会社 豊田中央研究所

課題番号                :S-20-NI-0047

利用形態                :技術代行

利用課題名(日本語)    :酸化イリジウムナノ粒子連結布の構造と触媒活性の起源

Program Title (English) : Origin of high catalytic activity of iridium oxide nanostructured textile

利用者名(日本語)      :東 相吾, 紅谷 篤史

Username (English)     :S. Higashi, A. Beniya

所属名(日本語)        :株式会社 豊田中央研究所

Affiliation (English)  :Toyota Central R&D Laboratories, Inc.

 

 

1.概要(Summary )

私たちの身の回りにある製品の90%以上が触媒反応により作られている。触媒として多用される白金やイリジウムは高価なため、代替材料を探索するとともに、ナノ触媒化することで、使用量を減らし、製品コストを抑える努力がなされている。しかし、そのプロセスコストは高い。例えば、貴金属ナノ触媒を合成し触媒層として利用するまでには、少なくとも液相合成→回収→洗浄→乾燥→混練(スラリー化)→塗工の6つのプロセスが必要である(図1)。

 

 

 

 

図1 従来の液相を用いたナノ材料の合成とナノ材料からなる触媒層の作製方法。洗浄回収工程は繰り返し工程であり、また目的のサイズのナノ材料を合成して触媒層を得るためには高度なスキルが必要である。

 

 

 

 

 

今回我々は、溶液を利用しないドライプロセスによる触媒層の作製方法を考案し(特許1)、IrO2ナノ粒子連結構造布(IrO2-textile)を作製してその水電解触媒性能と構造の詳細を調べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.実験(Experimental) 

水溶性のPVPポリマーナノファイバーからなる不織布を作り、その表面にスパッタ法で酸化イリジウムを作製した(図2)。構造は原子分解能分析電子顕微鏡 (JEM-ARM200F)により観察した。

3.結果と考察(Results and Discussion)

IrO2-textileは報告されている各種IrO2触媒の中で最も高い触媒活性を示した(文献1)。高活性の起源を明らかにする為、ナノテクプラットフォームを利用し、透過型電子顕微鏡により詳細構造を観察した結果、以下の重要な知見が得られた。

■IrO2-textileは1~3ナノメートルのIrO2ナノ粒子が連結した構造からなる(その為IrO2を構成する原子の多くが表面に露出している)

■IrO2-textileの表面には、再安定面と考えられている(110)以外の準安定面が露出している

■配位数が3、4、5の低配位なIrが存在している

これらは高い活性の起源であると考えられる。

 

 

 

図3 IrO2-textileを構成するナノクラスタとその表面原子配列

 

 

 

4.その他・特記事項(Others) なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

[1] S. Higashi, A. Beniya et al., Journal of Materials Chemistry A 8 (47), 25061-25072

尚、TEM観察は名工大浅香准教授に実施して頂いた。

感謝申し上げます。

6.関連特許(Patent)

1.WO/2019/049996:

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