利用報告書
課題番号 :S-18-MS-1073
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :重質油中のポルフィリン誘導体の物性評価
Program Title (English) :Evaluation of the physical properties of porphyrin derivatives of heavy oil
利用者名(日本語) :池上崇久1), 藤城零1),小土井 浩一2)
Username (English) :Takahisa IKEUE1), ReiFUJISHIRO2), Koichi KODOI2)
所属名(日本語) :1) 島根大学総合理工学部, 2) 一般財団法人石油エネルギー技術センター
Affiliation (English) :1) Department of Chemistry, Graduate School of Science and Engineering, Shimane University 2) Japan Petroleum Energy Center
1.概要(Summary )
我が国の石油製品の安定供給確保には、地政学的リスクや原油生産地域が多様化している現状を踏まえた非在来型原油等の供給源の多角化、そして安定的かつ効率的に石油製品を供給し得る石油精製能力・設備の維持が不可欠である。比較的小規模かつ最新鋭でないプロセスを擁する国内石油精製設備を、今後とも中長期にわたり維持していくためには、最先端の製油所へのモデルチェンジにより国際競争力を強化しなければならない。
こうした要求に応えるべく、経済産業省委託事業「高効率な石油精製技術の基礎となる石油の構造分析・反応解析に係る研究開発事業」では、原油一単位あたりの高付加価値製品を効率よく生産する「石油のノーブルユース」を目指し、残油脱硫装置(RDS)及び残油流動接触分解装置(RFCC)の全体最適化技術開発を推進している。
石油中に含まれるポルフィリン誘導体においては、金属イオンとしてバナジウムイオンが配位しているものが存在し、ESR測定が可能である。このため、ESR測定法を用いた石油の重質油中のポルフィリンの含有量やその物性についての研究を行うことを目的とした。
2.実験(Experimental)
様々な国で産出した石油の重質油をESR測定装置であるE500を用いて測定を行った。溶媒は、様々な有機溶剤で最適測定溶媒の検討を行った。また、4-50 KのX-bandのスペクトルの測定を行った。極低温での測定を行うことで、非常にシャープなシグナルを得ることを目的とした。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ESRによって、重質油に含まれるバナジウムポルフィリン誘導体の量が、ICP massで測定したバナジウムイオン量とほぼ一致したことから、バナジウムイオンのESRスペクトルを利用することで、石油中に含まれるポルフィリノイドの量が定量できることを見出した。
さらに、ポルフィリン誘導体の種類に注目し、重質油中に含まれるポルフィリン誘導体の詳細なESRスペクトル解析を行った。
その結果、ポルフィリン誘導体であるクロリンやバクテリオクロリンは、ポルフィリンと異なったシグナルを示すことを発見した。この結果は、ポルフィリンの分解過程のち県を得るためにおいては非常に大きな発見であった。
さらに、様々なポルフィリン誘導体の種類を調べ、またその構造と本研究室で合成したモデル化合物を比較したが、ポルフィリン骨格を有する化合物においては、スペクトルに大きな変化がないことがわかった。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
研究成果を経産省に報告前のため、公表できなかった。
6.関連特許(Patent)
なし