利用報告書
課題番号(Application Number):S-15-NR-0013
利用形態(Type of Service):技術代行
利用課題名(日本語) :金型表面の樹脂成分不着物の変化確認
Program Title (English) : Resin-molding stamping-dies surface analysis
利用者名(日本語) :吉岡 篤
Username (English) : A. Yoshioka
所属名(日本語) : 第一精工株式会社
Affiliation (English) : DAI-ICHI SEIKO CO.,LTD.
1.概要(Summary )
樹脂成型を繰り返すことにより金型からの離型状態が悪化する問題が起こる.その原因は金型表面に付着した樹脂成分が変質するためと考えられる.そこで付着物の成分とその化学状態を分析できる可能性のあるXPSを用いて表面分析を行った.
2.実験(Experimental)
使用した装置はアルバック・ファイ社製Versa ProbeIIである.約100μmφ に集束したAl Kα X線(1486.6 eV)を試料表面に垂直に照射し,脱出角45°で放出される光電子を半球型分光器で分光した.束縛エネルギー1400 eV – 0 eVの概観スペクトル(Survey spectrum)を取得した.検出されたピークについて詳細なスペクトル(Narrow spectrum)を取得した.真空度は約1.0×〖10〗^(-7) Paであった.測定した3種類の試料A, B, Cのうち,試料Aは離型がよいもの,試料Bは試料Aを熱処理したもの,試料Cは離型が悪いものである.各試料につき図1のように5点測定した.試料Bは離型の悪化と熱履歴の関係を確かめるために測定した.
3.結果と考察(Results and Discussion)
試料A, B, CのSurvey spectrumを図2に示す.試料表面には酸素,炭素,珪素が存在する.予想に反し,離型のよい試料Aと離型の悪い試料Cとが類似のスペクトルを示した.試料Bは,試料A, Cと比較して酸素のピークが高くなっていることから表面が酸化されていると考えられ,またバックグラウンドが高い傾向が見られることから表面状態は汚染されているか荒れていると考えられる.
炭素と酸素のNarrow spectrumを図3に示す.試料A, Cはほとんど同じピークを示した.試料BのC1sピークは高束縛エネルギー側に小さなピークがあり,O1sピークは試料A, Cと比較して高いことから,試料Bは酸化が進んでいると考えられる.これはSurvey spectrumから予想される結果と一致した.
離型のよい試料Aと離型の悪い試料Cがほとんど同じ結果を示したことから,表面元素組成と離型の悪化との関連を見出すことはできなかった.また試料Bと試料Cが異なる結果を示したことから,熱履歴と離型の悪化との関連も見出せなかった.新たな視点から調査する必要がある.
4.その他・特記事項(Others)
無し
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
無し
6.関連特許(Patent)
無し







