利用報告書
課題番号 :S-20-NM-0021
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :金属ナノ粒子の分光学的利用
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :二又 政之、吉本貴洸1)
Username (English) :
所属名(日本語) :1) 埼玉大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) :
1.概要(Summary)
我々は、金ナノ粒子(AuNP), 銀ナノ粒子(AgNP)を用いて溶液中の化学種の高感度ラマン分光分析を行っている。特にAuNPは生体分子との親和性が高く、低侵襲性であり、生体系への適用が進められている。我々は、生体系でのセンシングを目指して、クエン酸還元法で形成したAgNPやAuNPを、目的分子の吸着を利用して、近接させ、可視領域のレーザ光を用いて、局在表面プラズモンをカップルさせ、カチオン性色素、各種チオール、DNA-RNA塩基など種々の目的化学種のラマン信号強度を108-1010倍増強することに成功した。ここで用いるAuNPやAgNP表面に残留したクエン酸は、粒子の孤立分散性を数か月もの長期間維持するため、安定して利用できる。一方で、クエン酸はカルボキシレートイオンで静電的に金属ナノ粒子に吸着するため、配位結合等で弱く吸着する有機分子、例えばDNA塩基は、高い被覆率を得られず、ラマン信号強度も十分強くはない。また、チオール分子や塩化物イオンは、AgNP表面のクエン酸を完全に置換除去できると考えられていたが、それに関し定量的な解析は行われていない。そこで、クエン酸の吸着状態や、ほかの化学種の吸着に対する影響を明らか異にする必要がある。今年度は、AgNP, AuNP表面のクエン酸残留物のDNA塩基や塩化物置換性等を調べた。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】 ゼータ電位測定装置
【実験方法】化学還元法で形成したAgNP, AuNP分散水溶液のpH調整や塩化物添加、PMBA, DNA塩基添加を行い、金属ナノ粒子表面残留物であるクエン酸の置換吸着のしやすさ、上記化学種の吸着性をゼータ電位測定により分析した。大学での可視分光、振動分光測定、XPSなどを併用して、AgNP, AuNP表面残留物であるクエン酸の、幅広い化学種の吸着挙動への寄与を解析する。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
以下の点が明らかになりつつある:①AuNPへのpHに依存したDNA塩基の吸着状態として3種類があること、②その近接臨界濃度と吸着状態の分光学的解析の結果と矛盾しないゼータ電位の測定結果が得られた。
4.その他・特記事項(Others)
装置の汚染の問題はNIMS服部氏、小原里美氏、高橋みどり氏により改善された。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent) なし